ユースケ・サンタマリアが明かす、自身の仕事観「この仕事は毎回賭けなんです」

ユースケ・サンタマリアが明かす、熱い仕事観

「センスとか、エゴとか混ぜ込める、変わった仕事だと思う」


――お仕事ドラマということで、仕事観についてもお聞きしたいのですが、ユースケさんにとって「働く」とは?

ユースケ:先立つものがないと、っていうのはあるけれど、だからといって「金儲けの手段」というわけでも、「お勤めだから」でもなくて。やっぱりバラエティは、どうしても自分のパーソナリティみたいなものを出さざるを得ないし、ドラマだって「はいはい、このセリフ言えばいいんでしょ」なんて思えない。「このセリフは違うんじゃないかな」と思ったときは、監督と話しますし。センスとかエゴを混ぜ込める仕事だから、やり続けられているというのもあると思うんです。変わった仕事だなって思うけど。

――この仕事をしていて「幸せだな」って感じる瞬間はありますか?

ユースケ:たまにあります。夜中まで、わけわかんないシーンを撮っていて、血糊つけて、じーっとしてるときとか「俺、何やってるんだろう」と思うのと同時に「あ、俺、今幸せかも」って(笑)。ちょっと浮世離れした、非現実的な仕事してる感覚になるときに、謎の多幸感がありますね。あと、「ここすごい好き!」っていうシーンをやるときとか。バラエティに関しては、本当に面白くてやってることが多いから、「こんなんでギャラもらっていいのかな」と思ったりもします。だから、仕事なんだけど、「仕事として割り切ってやってる」という感覚は、全くないですね。

――先ほど、福永が声を荒げるシーンを撮影していましたが、ユースケさんも「ここは!」となったら主張するタイプなんですか?

ユースケ:あそこまで強く言うことはないです! でも、「これちょっとおかしいんじゃないかな」っていうのは、戦わないとね。自分もストレスが貯まるし、現場の不満になっちゃうから。でも、「あのさぁ〜!」みたいな喧嘩腰には言いませんよ。言い方っていろいろあるでしょう? 監督と話していたんだけど、福永は結構気の小さい男なんですよ。だから、余裕ぶっこいてるように見せかけて、「やべぇ!」って場面になると、軽くパニくって、声を荒げてしまうみたいなところがあるんじゃないかなって。だから、さっきも「もう1段階上げて」って、声の大きさを監督と調整しながらやっていったけれど、僕はそれでいいと思う、みんなで作るものだから。

――なるほど。他にも福永を演じる上で、注意しているところはありますか?

ユースケ:最初に「ユースケさん、怖い役じゃないですからね」と口酸っぱく言われたんです。最近、僕が演じる役が、そういう怖いキャラが多かったからだと思うんですけど、多分、視聴者のみなさんも同じように、「ユースケが出てきたぞ、どんな気持ち悪い感じでくるかな」って見る人もいると思っていて。それを、ちょっと裏切っていきたいです。ただ、僕も他の共演者のみなさんも、ほとんどこういう一般企業に勤めたことのない人たちだから、探りさぐりなところもあって。脚本もちゃんと書かれているし、面白いんですけど、めちゃくちゃインパクトがあるようなキャラクターもいないから。ちゃんとやらないと、ドラマがうねらないというか、退屈なドラマになってしまうかもって危機感を持っています。

「仕事は毎回賭け。全力であがき倒す、だからしんどい」


――撮影の合間に吉高さんたちと親指ゲームをしていましたが、あのゲームはユースケさんからの提案ですか?

ユースケ:あれは由里子ちゃんが、急に拳を出して始めたのよ。僕は、ルールも知らなくて初めてやったから。でも「負けたら5万円ね!」なんて冗談で言ったら僕が負けちゃって(笑)。「これはリハーサルだ!」って逃げてきたけど。48歳になりましたけど、ずっと精神的には幼いというか、変わらないです、癖とか、好みの冗談とか……。ちょっとは落ち着いたけど、今の若い人はしっかりしたヤツ多いなって思います。自分が情けない(笑)。

――え! 余裕があるからこそ、現場を盛り上げているように見えました。

ユースケ:よくそう言っていただけるんですけど、僕としては「しめしめ」って話で。自分のためにやってるんです。そうしたほうが、やりやすいから。でも、静かにしていたい人もいるだろう、とも思っています。集中してやらないといけないシーンもありますし。そういうときは空気を読んで、話しかけないようにはしていますけど、結局、自分のためにやってるんですよ、現場で居やすいように。

――なるほど、作品を良くするためのひとつの戦略なんですね。

ユースケ:ぶっちゃけて言うと、この仕事は毎回賭けなんです。役者が、どんなに熱演しても、脚本がダメならつまらないし。監督がダメならクソダサい作品になっちゃう。逆もしかりですけど、それでも、作品は残るじゃないですか。だから、どうにか良くしようって、僕は全力であがき倒します。だから、しんどいんです。でも、しんどいながらに続けていると、ときどき「この仕事に出会えて本当によかったな」って思える瞬間があるわけで。それは運としか言いようがないですけど、一生に何作品かしかないかもしれない出会いを信じて、毎回全力を注いでいくしかなくて。この先も代表作だって言える作品を1つでも多く残せたら、と思っています。でも、その実感は終わった時にわかるんです。だから、このドラマも自分にとって代表作のひとつになることを願って、目の前の撮影を一つひとつやっていくのみです。

(取材・文=佐藤結衣)

■放送情報
TBS系火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて、4月16日(火)スタート 毎週火曜22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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