10連休GWが起こした珍事? コナンとアベンジャーズの「掟破り」コラボの理由

コナンとアベンジャーズのコラボの理由

 2018年の年間興収ランキングでも、3位の『名探偵コナン ゼロの執行人』と12位の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』には大きな差がある。結局、11月公開の『ボヘミアン・ラプソディ』が年間1位の超特大ヒットとなったおかげで、全体の映画興収は前年(2017年)からの2.7%減という微減レベルに収まったものの、東宝やディズニーという大メジャーにとっては、各作品の興収だけでなく、映画興行全体の規模の縮小こそが最大の敵とも言える。また、これまで22年間続いている『コナン』シリーズ、11年間続いている『アベンジャーズ』ともに、既存のファン層はあらかた開拓し尽くしたという状況にある。一見、ずっと「負け」てきた『アベンジャーズ』にはメリットがあっても、ずっと「勝って」きた『コナン』にはメリットがなさそうな今回のコラボレーションだが、大局的に見れば「ゴールデンウィーク興行全体を盛り上げる」という共通の目的を有していると言える。

 加えて、今年のゴールデンウィークは空前の10連休。これまで映画界にとってゴールデンウィーク興行は年間を通じて正月興行と夏休み興行に続く「3番目の書き入れ時」であったが、日本映画と外国映画の最有力作品がこうして揃い踏みした今年に関していうならば、「2番目の書き入れ時」、あるいは「最大の書き入れ時」も狙えるという目論見もあるのだろう。現在、世界的にはNetflixを筆頭とするストリーミングサービスの脅威に映画界全体が晒されていて、数年遅れているとはいえ、その波は日本にも確実に押し寄せてきている。2019年が終わった時、もしも3年前(2016年)の歴代最高興収2355億円を超える記録を達成したら、その時は改めて今回の「掟破り」のコラボレーションが「成功した」と振り返ることになるだろう。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『名探偵コナン 紺青の拳』
4月12日(金)全国公開
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中) 
監督:永岡智佳
脚本:大倉崇裕
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、山口勝平ほか
ゲスト声優:山崎育三郎、河北麻友子
配給:東宝
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント 
(c)2019青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
公式サイト:http://www.conan-movie.jp

『アベンジャーズ/エンドゲーム』
4月26日(金)全国公開
監督:アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、ポール・ラッド、ブリー・ラーソン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2019/
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/avengers-endgame.html

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