稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が“映画俳優”として飛躍 「新しい地図」だからこそ挑戦できること

新しい地図が“映画俳優”として飛躍 

 そして『クソ野郎と美しき世界』のエピソード2「慎吾ちゃんと歌喰いの巻」は、香取慎吾が“慎吾ちゃん”として出演。舞台演出家・劇作家としても評価の高い山内ケンジ監督(『ミツコ感覚』)が生み出したのは、歌を喰われたアーティストという、香取慎吾本人とおぼしき役だった。香取は、“絵を描く”という素晴らしい才能を持つが、三谷幸喜作や『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両さんなど、はまり役がありつつも、映像作品においては、稲垣や草なぎのほんの少し後ろを行く印象もある。

『凪待ち』出演者、上段中央が香取慎吾(c)2018「凪待ち」FILM PARTNERS

 だが、「慎吾ちゃんと歌喰いの巻」では、本人と言ってもいい役柄であったためか、驚くほど自然にその場を支配していた。矛盾するようだが、しかし自分に近いというのは決して簡単な役ではない。自分をさらすことは、ある意味、何かを演じることよりも勇気のいることだ。そこを素直に見せた香取の強さを感じる。そして6月には、現在の日本映画の先頭を走る白石和彌監督作『凪待ち』で主演を飾る。ここで“慎吾ちゃん”ではなく、40代の男となった香取慎吾の生身の姿がさらに覗けるかもしれない。

『クソ野郎と美しき世界』(c)2018 ATARASHIICHIZU MOVIE

 3人が揃って登場した『クソ野郎と美しき世界』のエピソード4「新しい詩(うた)」(児玉裕一監督)には、稲垣、草なぎ、香取の決意がみなぎっていた。彼らだから培ってきたものを捨てることなく、「新しい地図」としてスタートしたからこそ踏み出せる場所へと、果敢に攻めていくその姿勢は、すでに日本の映画界を担う監督の間で重宝される存在として形になって現れ出てきている。キャリア十分にして、まだ折り返し地点でもある3人。これから、映画俳優としてもなお一層、魅了していってくれるに違いない。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■公開情報
『凪待ち』
6月、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
出演:香取慎吾、恒松祐里、西田尚美、吉澤健、音尾琢真、リリー・フランキー
監督:白石和彌
脚本:加藤正人
配給:キノフィルムズ
(c)2018「凪待ち」FILM PARTNERS

『まく子』
テアトル新宿ほか全国公開
出演:山崎光、新音、須藤理彩、草なぎ剛、つみきみほ、村上純(しずる)、橋本淳、内川蓮生、根岸季衣、小倉久寛
原作:『まく子』西加奈子(福音館書店刊)
監督・脚本:鶴岡慧子
主題歌:高橋優「若気の至り」(ワーナーミュージックジャパン/unBORDE)
配給:日活
(c)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)
公式サイト:http://makuko-movie.jp/

『半世界』
全国公開中
脚本・監督:阪本順治
出演:稲垣吾郎、長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦
配給:キノフィルムズ
(c)2018「半世界」FILM PARTNERS
公式サイト:http://hansekai.jp/

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