『イノセンス 冤罪弁護士』坂口健太郎が訴え続けた“正義”とは 最終回は武田真治の怪演も話題に

『イノセンス』坂口健太郎の正義

 科学鑑定の証人として証言台に立った秋保が語ったのは、人が偏見や思い込みを持ち、あるいはくだらない面子を維持しようとすることで冤罪は生まれるということ。そこで必要なのは、「愚直なまでに真実を追究しようする意志」。拓のような強い信念を持った弁護士こそが、被害者や遺族の苦しみを晴らすことができると、今までの拓の行動を全肯定しながら、そう秋保は語気を強める。

 本作において、黒川拓という人間は決して強い人間としては描かれていない。裁判で負けるとひどく落ち込むし、冷静を装いながらも常に心は11年前の事件における悔しさで溢れている。それでも拓が負けないで挑んでこられたのは、「真実はわからない、けれど絶対にわかろうとする」という強固たる意志があったからだ。過去の悔しさと未来への希望を持っているからこそ、時として拓が進むべき方向を見失った際にも、拓の持つ信念の“正しさ”は楓や秋保によって復唱されていく。

 最後に、真実を追究し続けるこころざしと、過ちがあったときに正すことのできる勇気を持つことの重要性を語る拓。やはり真相が明らかになったところで、目の前がスッキリと晴れ渡ることはなかったかもしれない。しかしそれでも、とことん真相を突き詰め冤罪を晴らすことで、現在と未来を生きる人々の救われる心はあると伝えた『イノセンス』。変えられない過去を背負いながらも、前を向いて歩みを進める登場人物たちの姿を克明に捉えながら、このドラマの物語は幕を閉じた。そしてその想いは、視聴者の心へと受け継がれていくのだろう。

■原航平
編集/ライター。1995年生まれ。映画、ドラマ、演劇など、とにかく物語と役者に興味津々。大学時代の卒業論文の題材は「疑似家族を描く日本映画について」。
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■公開情報
土曜ドラマ『イノセンス~冤罪弁護士~』
出演:坂口健太郎、川口春奈、藤木直人、趣里、杉本哲太、市川実日子、志賀廣太郎、小市慢太郎、正名僕蔵、赤楚衛二、草刈正雄
脚本:古家和尚
音楽:UTAMARO Movement
音楽プロデュース:岩代太郎
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:荻野哲弘、尾上貴洋、本多繁勝(AXON)
演出:南雲聖一、丸谷俊平
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/innocence/

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