『後妻業』木村佳乃の話はすべて“嘘”だった? 真実が明かされない最終話に

『後妻業』真実が明かされない最終話に

 一方で「母親になれなかった」と話す小夜子が見せる、博司(葉山奨之)への思いにも注目だ。小夜子が実の母親だと感づいていた博司(葉山奨之)は小夜子のもとへやってくる。だが小夜子に「あんたなんか生むんやなかった」と言われ、博司は小夜子の首を締めてしまう。予告編で流れていたように、小夜子の死は衝撃的なものだった。だが実際には、機転を利かせた小夜子が死んだふりをしていたことが判明する。

 博司を演じる葉山は、母親に手をかけたことを後悔し、自分のやったことに怯える姿を好演した。葉山は、チンピラらしく振る舞いながらも実はビビりな博司をイキイキと演じていた。臆病な表情や状況が理解できずパニックになる演技からは、博司の人生経験の浅さや幼さが伝わる。

 そんな博司を、小夜子は一芝居打つことで守った。死んだふりをしながら博司の思いを聞いた小夜子は、舟山組への一件に巻き込んでしまった博司を逃がすため、柏木に協力を求める。もちろん小夜子の博司への思いは、博司が望む母親像とは違うものだろう。だが小夜子は「博司は困ったときに柏木に泣きつく」と分かっている。恐らく彼を逃がした後も、柏木を通じて見守り続けることができると確信していたのではないだろうか。

 最終話で彼女たち親子の関係がどうなったかは語られない。だが、困ったことがあれば博司は柏木に泣きつくはずだ。彼女たちなりに、親子としての関係を少しずつ築き上げていくのかもしれない。

 何が真実なのか明かされないまま最終話をむかえた『後妻業』。捉え方によって見方はガラリと変わることだろう。極端な話、第1話から第8話までの小夜子の話がすべて嘘だったという可能性も0ではない。しかし、木村佳乃がどこか憎めない小夜子を魅力たっぷりに演じたことで、視聴者も小夜子に魅了されてしまったのではないだろうか。視聴者をやきもきさせる最終話そのものが、“後妻業”のエース・小夜子による騙しのテクニックだったのかもしれない。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
『後妻業』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜21:54放送
出演:木村佳乃、高橋克典、木村多江、伊原剛志、葉山奨之、長谷川朝晴、篠田麻里子、平山祐介、田中道子、河本準一、濱田マリ、とよた真帆、泉谷しげる
原作:『後妻業』 黒川博行(文春文庫刊) 
脚本:関えり香
演出:光野道夫(共テレ)、都築淳一(共テレ)、木村弥寿彦(カンテレ)
音楽:眞鍋昭大
企画・プロデュース:栗原美和子(共テレ)
プロデュース:杉浦史明(カンテレ)、萩原崇(カンテレ)、水野綾子(共テレ)
制作:カンテレ、共テレ
(c)関西テレビ
公式サイト:https://www.ktv.jp/gosaigyo/index.html

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