『トレース~科捜研の男~』錦戸亮が見せた折れない信念 最終回で明らかになった事件の真相とは

『トレース』最終回で見せた錦戸亮の信念

 最終回において、真相を知った真野が復讐に走ってしまうのかも、注目すべき点だった。隠れていた早川は壇を刺し殺し、自らナイフで命を絶とうとする。真野にとって早川は姉を妊娠させ一家を惨殺した犯人。しかし、真野は早川を助けてしまう。

 これまでの物語で真野は、沢口ノンナ(新木優子)や虎丸良平(船越英一郎)とともに遺族に真実を伝える役割を果たしてきた。時に、事件には受け止められないような真実も秘められている。しかし、遺族がそこから前を向き、暗い海の底から光を見られるかは、自分自身にかかっている。真野も同じだ。自身に眠る憎悪が打ち勝ち、壇と早川を見殺しにした場合、それは二度と帰ってこれない復讐の連鎖に足を踏み入れてしまうことになる。涙を流し壇と対峙する真野の瞳には、哀しみの奥に折れない信念が垣間見えた。

 「俺は前に進みたい。そう思ったんです」。そう言って真野は必死に力になってくれた虎丸と握手を交わす。真野に好意を寄せ“信じてくれる人間”として虎丸が彼のそばに寄せた沢口は、事件後科捜研に姿を見せない真野を信じ、いつものように彼を迎える。真野が沢口を見つめる視線からは、虎丸の「彼女を信じてくれる人間に」という思いは伝わっているようだ。

 『トレース~科捜研の男~』は、古賀慶の『トレース~科捜研法医研究員の追想~』を原作としており、現在も『月刊コミックゼノン』で連載中。以前、古賀は原作とドラマは異なるラストになることをツイートしており、ドラマは意識不明で昏睡状態の壇が目を覚ましラストを迎える。そのたった一つ残された痕跡は、未来に繋がる手がかりであるように思えてならない。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『トレース~科捜研の男~』
2019年1月7日(月)スタート 毎週月曜21:00〜21:54放送
出演:錦戸亮、新木優子、山崎樹範、岡崎紗絵、矢本悠馬、山谷花純、加藤虎ノ介、小雪、遠山俊也、篠井英介、船越英一郎
原作:古賀慶『トレース~科捜研法医研究員の追想~』(ノース・スターズ・ピクチャーズ『月刊コミックゼノン』連載)
プロデュース:草ヶ谷大輔、熊谷理恵
脚本:相沢友子
演出:松山博昭、相沢秀幸、三橋利行
制作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/trace_drama/

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