初登場5位『スパイダーバース』が切り拓いた、マーベル&ソニー・ピクチャーズの新たな可能性

マーベル&ソニーの新たな可能性

 周知の通り、マーベル作品でソニーが権利を有しているのはスパイダーマン関連の作品のみ。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(ディズニー)から始まったマーベル・シネマティック・ユニバースとの提携は、『スパイダーマン:ホームカミング』(ソニー)、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(ディズニー)で大きなシナジー効果を生み、来月に世界同時公開される『アベンジャーズ/エンドゲーム』(ディズニー)と今夏公開の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(ソニー)の計5作品となり、今後の計画はまだ不透明。ファンの多くはその提携の継続を願っているだろうが、ディズニーとしては、今月20日に20世紀フォックスの買収を完了させることで、その権利を手中に収めることになる20世紀フォックスのマーベル作品、X-MENシリーズ(当然デッドプールも含まれる)やファンタスティック・フォーとのクロスオーバー作品の可能性を探るという大きな課題もある。

 つまり、これまでディズニー、20世紀フォックス、ソニーと3つに分かれていることで少々複雑だったマーベル作品の権利は、今後「スパイダーマン関連以外はディズニー」とシンプルな区分けとなるわけだ。そのような状況もふまえ、ディズニーとの提携中は自由に使えなかったスパイダーマン(『ヴェノム』にスパイダーマンが出てこなかったのも、『スパイダーマン:スパイダーバース』がアニメーション作品として作られたのもそれが理由の一つ)の縛りが解ける可能性も含め、今後、ソニーがスパイダーマン関連キャラクターだけで独自のユニバースを展開させていこうとしているのは自然の流れだろう。『ヴェノム』と『スパイダーマン:スパイダーバース』の大ヒットによって財政を持ち直すまで、近年「買収されるのではないか」という噂が度々流れていたソニーの映画・テレビ部門。特に、興収面だけでなく批評面でもアメコミ映画ファンから絶大な信頼を得た『スパイダーマン:スパイダーバース』は、マーベルとソニー・ピクチャーズの未来を大きく変えることとなった。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『スパイダーマン:スパイダーバース』
全国公開中
製作:アヴィ・アラド、フィル・ロード&クリストファー・ミラー
監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン
脚本:フィル・ロード
吹き替えキャスト:小野賢章(マイルス・モラレス/スパイダーマン役)、宮野真守(ピーター・パーカー/スパイダーマン役)、悠木碧(グウェン・ステイシー/スパイダーグウェン役)、大塚明夫(スパイダーマン・ノワール役)、吉野裕行(スパイダー・ハム役)、高橋李依(ペニー・ パーカー役)、玄田哲章(キングピン役)
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:spider-verse.jp
公式Twitter:https://twitter.com/SpiderVerseJP/
公式Facebook:https://www.facebook.com/SpiderVerseJP/

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