長谷川博己、『まんぷく』の次は大河ドラマ『麒麟がくる』も 芝居に安定感生む“演出家”としての顔

『まんぷく』長谷川博己の“演出家”としての顔

 彼の中に存在する「演出家・長谷川博己」は、紛れもなく、蜷川幸雄をはじめとする名だたる演出家たちと芝居をしてきた賜物だろう。舞台上で演じる彼を、客観的に見つめる演出家が常に叱咤し、指導し、支えてきた。彼はそうやって演技を磨いてきた俳優だから、自ずと演出家視点というものが備わっていったことは想像に難くない。2012年以降、舞台の仕事からは離れているが、やはり彼の演技メソッドの原点は舞台であることに変わりはないはずだ。

 彼はあらゆる役を見事に演じて見せてくれるが、視聴者である私たちと「俳優・長谷川博己」の間には、実は「演出家・長谷川博己」が存在している。私たちは「演出家・長谷川博己」の視点というワンクッションを置いてから彼の演技を見ており、その冷静な視点のフィルターが間に挟まることで、「俳優・長谷川博己」が演じているのはフィクションの中のキャラクターであるという、現実と虚構の境界線を無意識のうちに認識しながら物語の世界を楽しむことができている。彼の演技から感じられる安心感の秘密は、そこにある。

『まんぷく』(写真提供=NHK)

 『まんぷく』は実在の人物をモデルとしているが、フィクションとして再構成された物語だ。これまでも現実への示唆に富んだ物語を提供してきてくれたこのドラマにおいて、長谷川博己が「立花萬平」という人物を、リアリティを持ちつつ最後まで「フィクション上のキャラクター」として演じ切る姿を、楽しみながら見届けたい。

■久田絢子
新聞ライター兼編集(舞台担当)→俳優マネージャー→劇場広報→伝統芸能(主に能楽)関連お手伝い、と舞台業界を渡り歩き現在フリーライター。ウェブ「エンタメ特化型情報メディアSPICE」「goo映画」等で舞台や映画等エンタメ関連記事を執筆中。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、松下奈緒、要潤、大谷亮平、桐谷健太、瀬戸康史、岸井ゆきの、松井玲奈、深川麻衣、加藤雅也、牧瀬里穂、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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