菅田将暉のメッセージに10日間のすべてが集約 『3年A組』がネット社会へ訴えかけた強烈な警鐘

 それから13年半を経た今では、そんな出来事がネット上でつづられればすぐさま「嘘松」などと揶揄される時代に変わってしまったわけだ。それはネットが生活に欠かすことのできないツールとなった反面、それによっていろいろなことが失われて、社会全体が荒んできたからのように思える。そんな中で本作は、武藤が現代というネット社会へ訴えかける強烈な警鐘といえよう。昨年度のいわゆる「ネットいじめ」と呼ばれる暴力の認知件数は12632件にのぼる。使い古された方法で警鐘を鳴らしても、今の社会には、そして何より今の子供たちには届かない。そんな苦しさが、教室という閉塞した空間からすべてが発信される物語に象徴されているようにも見える。

 ドラマ終盤で登場するようになった、武智(田辺誠一)を追い詰める幻覚もまた、SNSが生み出す恐怖を視聴者に体感させるねらいがあったのだろう。このドラマに本来あった演出の流れを打ち消してでも入れる価値はあったと、この最終回の演出を見ると感じずにはいられない。そしてまた、暴力の加害者へ問題意識を植え付けると同時に、加害者にも被害者にも向けられた一番大きなメッセージがあったことは見逃せない。それは最後の屋上のシーンで生徒を前にして柊がつぶやく小さな言葉、「死ぬのは、怖いな」。実にシンプルで、すごく当たり前の考えであるはずのその一言に、この濃密で長い10日間のすべてが集約されているのかもしれない。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■配信情報
『3年A組 ―今から皆さんだけの、 卒業式です―』
Huluにて、前編配信中 3月17日(日)深夜0時より後編配信
(c)NTV
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/3A10/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる