市川実日子が抱えるジレンマ 『イノセンス 冤罪弁護士』苦い現実にある“たったひとつの救い”を描く

『イノセンス』市川実日子のジレンマ

 聡子はマスコミの人間としてジレンマを抱えている。事件の真相を報道して被害者の無念を晴らすことを使命としてこの仕事に携わりながら、上層部にはそうした番組は視聴率が取れないと止められ、また、真実を報道しても救われない人間がいるという事実がある。マスコミの可能性を信じながらもそうした現実のなかで葛藤する聡子が、志を共にする拓に真相究明のバトンを託し、サポートし続けているという理由にも納得がいくだろう。不器用な面もありつつ、そんな彼女の本気の思いを肯定する秋保(藤木直人)からのエールが心にしみる。

 大規模実験によって新事実が明らかになり、真犯人となる人物の娘・由美(酒井美紀)からも証言を得た拓たち。再審請求の場では、真実が容認されるよう拓も念を押すが、請求は棄却されてしまう。「開かずの扉」は今回も開くことがなく、各々に突きつけられるのは苦しい現実。それでもたったひとつ救いがあるとするならば、父と娘が24年の時を経て再会を果たし、アクリル板で分断されながらも、彼らが手と手を合わせられたことだ。『イノセンス』は苦しい現実を突きつけるドラマではあるが、聡子や拓の行動は無駄ではなく、必ず救
いがあると訴えかけている。そうであるから、拓と秋保が大切な人を失った事件においても、その真相が明らかになった時にはきっと、彼らにも春風が吹いてくれるに違いない。

■原航平
編集/ライター。1995年生まれ。映画、ドラマ、演劇など、とにかく物語と役者に興味津々。大学時代の卒業論文の題材は「疑似家族を描く日本映画について」。
Twitter

■公開情報
土曜ドラマ『イノセンス~冤罪弁護士~』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:坂口健太郎、川口春奈、藤木直人、趣里、杉本哲太、市川実日子、志賀廣太郎、小市慢太郎、正名僕蔵、赤楚衛二、草刈正雄
脚本:古家和尚
音楽:UTAMARO Movement
音楽プロデュース:岩代太郎
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:荻野哲弘、尾上貴洋、本多繁勝(AXON)
演出:南雲聖一、丸谷俊平
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/innocence/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる