深田恭子に初めて芽生えた嫉妬 『はじこい』は人生を教えてくれる“先生”に

『はじこい』は人生を教えてくれる“先生”

 順子の学生時代を振り返ると、勉強しか目に入っていなかった。モモちゃん先生が同級生の牧瀬であることにも気づかず、嫌がらせを受けていた過去も覚えていないほどに。その鈍感さは、ある意味で順子の心を守る鎧となったが、それゆえに他者を受け入れる柔軟さに欠けてしまっていた。

 どうしても手に入れたかった東大合格=母親の愛のみが、当時の順子にとって大切なことだったのだろう。そんな条件がつかなければ、愛を証明することができないと思ったのは、順子の母とその義母の関係性からきているようだ。

 友だちなんていなくていい。恋なんてしなくていい。勉強さえできれば……。優先順位をつけて、1つの目標に突き進むことは素晴らしい。しかし、それゆえに多くの感情を置いてきぼりにしてしまった順子。30代になってユリユリに出会い、その学び直しをしている彼女は、ある意味で青春真っ只中ともいえる。経歴を詐称していたモモちゃん先生も「楽しそうね、春見さん」と思わず、久々に会った同級生・牧瀬としての感想が口から出てしまうほど。そして受験勉強以来のきらめきを取り戻した順子を見て、確執のあった母親もなんだかうれしそうだ。

 順子の鈍感さに、やきもきしながらも、じっくりと見守る美和(安達祐実)も、振り回されている雅志(永山絢斗)も山下(中村倫也)も、ある意味では順子の“先生”だ。そして、初めての嫉妬を教えてくれたユリユリも、もちろんモモちゃん先生も。異なる視点で気づきをくれるエトミカも、塾長も、母親も……関わる人すべてが人生勉強の先生なのだ。

 知らなかったものを知る勉強って、やっぱり楽しいものなのかもしれない。そんなことを思わせてくれる、このドラマも私たちにとって、いい“先生”。人生勉強にはゴールがない。ここまで勉強すればOKという区切りがない分、卒業もない。たとえ最終回を迎えても、ユリユリが「先生がいくら手離しても、俺、何回でも掴みに行くんで」と言ったように、そして恋がいつか愛に変わるように、このドラマが教えてくれることは、ずっと私たちの心の中にとどまり生きる糧となり続けるはずだ。まだユリユリの合格しか見えていない順子が、次に学ぶものとは何か。次回の予告映像では、何やら不穏な雰囲気だ。荒ぶるユリユリの姿に、心がざわめく。遊園地の中でも、ジェットコースターの列に並ぶような気持ちで、オンエアを待ちたい。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『初めて恋をした日に読む話』
TBS系にて、毎週火曜22:00~
出演:深田恭子、永山絢斗、横浜流星、中村倫也、安達祐実、石丸謙二郎、鶴見辰吾、生瀬勝久、檀ふみ、高橋洋、皆川猿時
原作:『初めて恋をした日に読む話』持田あき(集英社『クッキー』連載)
脚本:吉澤智子
プロデューサー:有賀聡(ケイファクトリー)
演出:福田亮介ほか
製作:ケイファクトリー、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/hajikoi_tbs/

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