メディアミックスとして大成功? 『アリータ:バトル・エンジェル』の絶妙なバランス

『アリータ』の絶妙なバランス

 ここで頭をよぎるのは、日本の偉人・範馬勇次郎の「競うな 持ち味を活かせッッ」精神だ。ロドリゲスもキャメロンも、原作でいう「ユーゴ編」のような流れの物語が得意だ(キャメロンなら『タイタニック』(1997年)、ロドリゲスなら『プラネット・テラー in グラインドハウス』(2007年)が好例だろう)。OVA版のシナリオをベースに、その持ち味を存分に発揮、単体の物語として話の筋を通している。

 もちろん最初に書いたように、全ての原作ファンを満足させることは不可能だ。本作の場合だと原作のマッドな雰囲気や、複雑に練られた背景/設定が薄れているのが痛い。この点において全くの別物だと感じるファンも多いだろう。原作の重要キャラがチラっとだけ出てくるのも、続編に期待と捉えるか、アイツの出番があれだけなのかと捉えるか、意見が分かれるところだ。しかし、『銃夢』という強烈な原作の1つのメディアミックス作品として、本作『アリータ:バトル・エンジェル』は可能な限りの努力をした力作である。本作を入口に、原作を手に取る人は確実にいるだろう。そしてそれは、メディアミックスとして大成功である。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『アリータ:バトル・エンジェル』
全国公開中
出演:ローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ
監督:ロバート・ロドリゲス
脚本・製作:ジェームズ・キャメロン
原作:『銃夢』木城ゆきと
配給:20世紀フォックス映画
(c)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/alitabattleangel/

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