役所広司は怒り、古舘寛治は困る 『いだてん』のユニークさを担う対照的な演技

『いだてん』古舘寛治のユニークさ

 ただ、さすがの嘉納もオリンピック予算と「辛亥革命」の出来事が重なったことは負担となったようだ。四三のオリンピック出場を諦めたわけではないが、どことなく元気のない嘉納。しかし印象的なのは、元気がないまま四三をオリンピック出場へ口説き落とそうとする嘉納に、横やりを入れない可児の姿だ。嘉納のオリンピックへの思いを知る可児だからこそ、オリンピック出場に関しては口を出さないと決めているのかもしれない。四三に対し深々と頭を下げる嘉納の姿を、黙って心配そうに見つめる可児の姿は強い印象を残す。ここでの古館の演技は、可児の嘉納に対する信頼を体現していた。

 とはいえ予算組み担当の可児。四三が、頭を下げた嘉納の姿に涙し、オリンピック出場を決めるや否や、嘉納に対しアイコンタクトやジェスチャーでお金の話を正直にするよう促す。なかなかお金の話を切り出せない嘉納に、お金を意味するジェスチャーで促す可児の姿はコミカルだ。このときばかりは、いつもの豪快な嘉納の姿はない。可児に押され、自費出場を勧めるまでに至った。嘉納を信頼しつつ、締めるところは締める可児の姿を演じられるのは、真面目さとコミカルさを併せ持った古館にしかできないのではないだろうか。

 四三がオリンピック出場を決めるまでが描かれた『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』第6話。四三たちのオリンピック出場は、今後も前途多難な道のりが続きそうだ。

※古舘寛治の「舘」の字は、正しくは、外字の「(※舎官)」

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45 
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45 
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:中村勘九郎、阿部サダヲ/綾瀬はるか、生田斗真、杉咲花/ 森山未來、神木隆之介、橋本愛/杉本哲太、竹野内豊、 大竹しのぶ、役所広司
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/
写真提供=NHK

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