「繰り返しは嫌だった」 ルカ・グァダニーノ監督が明かす『サスペリア』オリジナル版との差別化

『サスペリア』監督インタビュー

 グロテスクのみに留まらぬ芸術性を孕んだ映像が本作の特徴とも言えるが、潜在する恐怖を汲み上げるレディオヘッドのトム・ヨークの音楽もグァダニーノの世界と調和する。グァダニーノは起用理由について「僕の世代を代表する、とても有名な人がよかった。メランコリックで詩的な要素をすべて持っているのがトム・ヨークだった」と語る。

 また楽曲は共同で作り上げていったそう。「僕が『お願いします』とリクエストしたのではなく、一緒に協力して共に探していった感じだ。『マダム・ブランが決断するときは、こういう音楽、ダンスはこれがいいんじゃないか』という風に考えていった。非常に長く時間がかかったが、とても美しいプロセスだった」。

 今回リメイクするにあたって、グァダニーノは「女性のアイデンティティが支配する映画にしたかった」と言っている。現にメインキャストは全員女性。ティルダ・スウィントンは、マダム・ブラン/クレンペラー博士(ルッツ・エバースドルフ名義)/マダム・マルコスの3役で出演しているが、「このアイデアはデヴィッド・カイガニックと脚本を書き始める段階からあった」と話し、女性だけの映画にすることにこだわったと明かす。

 その一方で、アルジェント版の『サスペリア』はインスピレーションの1つに過ぎなかったと吐露。「繰り返しをするだけでは嫌だったんだ。アルジェントの『サスペリア』は、1976年に製作され、1977年に公開されたが、同作はファンタジーで周りの社会と全く関係ない物語だった。でも僕はアプローチとして、社会情勢に浸かっているものが作りたかったから、今回1977年のベルリンを掘り下げた」。

 ヒューマンドラマ、ラブストーリー、ホラーと新作が公開される度に、振り幅の広さを知らしめてきたグァダニーノだが、監督としては「折衷主義的になりたい」と考えているという。「違うものをより合わせて、色んなことができるようになりたい。僕は幽霊のホラー映画も撮りたいんだ。まだまだホラーは撮っていきたいね」。

(取材・文・写真=阿部桜子)

■公開情報
『サスペリア』
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー中
監督:ルカ・グァダニーノ
音楽:トム・ヨーク(レディオヘッド)
出演:ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、ミア・ゴス、ルッツ・エバースドルフ、ジェシカ・ハーパー、クロエ・グレース・モレッツ
配給:ギャガ
(c)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC All Rights Reserved
公式サイト:gaga.ne.jp/suspiria

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