滝藤賢一が語る、『探偵が早すぎる』の裏側と役者としての考え方 「主演をはれる俳優に」

滝藤賢一が語る、『探偵が早すぎる』の裏側

「2018年は、同時期にいろんな滝藤賢一が出せた年だった」

ーーちなみにアドリブって、どれぐらいあったのですか?

滝藤:僕は、そんなに言ってないですよ。ほぼセリフ通りです。広瀬さんと水野さんはアドリブだらけでしたね(笑)。僕は「ウーパールーパー」ぐらいですよ。

ーーああ、ありましたね。第8話でしたか。「突然、何を言い出すんだろう、この人は」って思いながら観ていました(笑)。

滝藤:あれ自分で言うのもなんですけど、最高でしたね。ウーパールーパーって(笑)。あれはやばかったですよ。横に立っている音声さんが、マイクを持ちながらプルプル震えるから、それにつられて僕も広瀬さんも笑っちゃって(笑)。あと、印象に残っているのは、第5話だったかな? 夏祭りのシーンで、ピロピロって伸びる紙の笛を、僕が広瀬さんの顔の前で吹くシーンがあったんですけど、それをプーッと吹いたら、広瀬さんの顔をプルプルと昇っていって……あれはやばかったですね(笑)。本番ギリギリまで笑いが止まらなかったから。というか、ああいうときに限って、広瀬さん、笑わないんですよね。ずーっと真顔で芝居をされていて(笑)。それが逆におかしくてしょうがないんですよ。

ーー観ているこちらとしては、どこまで台本通りなのかわからないドキドキ感がありました(笑)。

滝藤:僕も、もはやどこまでが台本どおりか分からないですよ(笑)。セリフを憶える時間もなくて、撮影に追われていましたから。でも、そういうもののほうが、逆に生きた芝居になったりするんじゃないですかね? 何かわからないけど面白いことが起きていて、その勢いに乗せられて、シーンを乗り切っていく。起きないときは何も起きない。マスター役の高橋努さんとは見切り発車して全く何も起きないことが多々ありました。“何も起きませんでしたね”って、二人で爆笑していました(笑)。

ーー(笑)。そう、今回発売されるDVD-BOXには、GYAO!で期間限定公開されていた、各話の間に入る「チェインストーリー」がすべて収録されるとのことですが、あれも相当アドリブが多そうなエピソードでしたよね?

滝藤:あれは僕、そんなに出演していないですけど、みなさんメチャクチャやってましたよね。特に、広瀬さんと水野さんが(笑)。台本はあるんだけど、それをほとんど無視してやっていて。笑いをこらえながらやっているのが、観ている側にもわかるというか、もうほとんど勢いでやっているというか。脚本家の方に申し訳ない気持ちでいっぱいです。あの2人に代わって謝ります。本当に申し訳ありませんでした(笑)。

ーーその要素は、結構本編にもあったような気がしましたけど?

滝藤:ああ……だって、湯浅監督は、あの感じで本編やりたいって言われてたんですよ? あのチェインストーリーの感じで、本編をやりたいって。それはさすがにちょっとどうかなって、僕は思ってましたけど(笑)。このチームだからできたことってあると思うんです。キャスト陣もエネルギーに溢れていたし、それを面白がって撮ってくれたスタッフ、そんな僕らを温かく見守ってくれたプロデューサー……そういうチーム全体の頑張りによって、超ハードスケジュールでしたが楽しいドラマになったんだと思うんですよね。

ーーなるほど。ちなみに、僕が滝藤さんを初めて観たのは、多分映画『クライマーズ・ハイ』だったと思うのですが、当初は神経質なサラリーマン役だったり、内にため込むような役が多かったですよね。

滝藤:そうですね。30代は、「犯人と言えば滝藤」じゃないですけど、犯人役のオファーは全部やりますって気持ちでいたんです。日本国民全員に嫌われる、不快感を与える俳優(笑)。でも、メディアに出れば出るほど神経質な役とか病的な役に説得力がなくなってきてしまうから……そのへんは難しいところですよね。“狂犬”みたいな役は、やっぱりまだ世に出ていない方がやったほうがインパクトがあるというか、観ている人たちも何が起こるか分からないスリルがあるでしょうし。そういう役を僕がやると、「あ、また犯人か」、「絶対、何かあるぞ」みたいに思われてしまうから。なので、さらに今の自分を超えていかないといけないわけです。まさしく生涯修行ですね。

ーーなるほど。

滝藤:今は偏らずにいろんな役のオファーをいただけるので、本当にありがたいです。『半分、青い。』は、とっても幸せなおとーちゃんでしたでしょ?

ーーああ、永野芽郁さんのお父さん役をやられていましたよね。

滝藤:まさか、朝ドラの父親役をやらせてもらえるなんて、思ってもみなかったです。数々の犯罪者役を演じてきましたから。朝ドラっていう顔もしてないですしね(笑)。チャンスをいただけたことに感謝しております。大きな夢が一つ叶いました。そして、2018年は、シリアスな感じとはっちゃけた感じと、すごく良いバランスで、同時期にいろんな滝藤賢一が出せた年だったのかなっていうのは思います。『花のち晴れ~花男 Next Season~』の息子に完璧を求める厳しい父親。『ミス・シャーロック/Miss Sherlock』の愛妻家インテリ刑事。『コールドケース2 ~真実の扉~』のやさぐれた刑事。『ハラスメントゲーム』の頼りない3代目社長。

ーーそう、『ハラスメントゲーム』で、また広瀬さんと共演されていて……。

滝藤:『探偵が早すぎる』を観てくださっていた方は、いつ僕が暴れ出して、広瀬さんとガチャガチャやり出すんだって思っていたみたい(笑)。そうやって楽しんで観ていただいてるのは、とても幸せです。

ーー(笑)。滝藤さんは、仲代達矢さんが主宰する俳優養成所「無名塾」で舞台を約10年、その後、映画やドラマに出るようになって10年ぐらいになりますが、今後の目標みたいなものって何かあるのでしょうか?

滝藤:そりゃ、いっぱいありますよ。その中でも、常に持ち続けなければならないのは、主演をはれる俳優になるということです。これは生涯変わらぬ目標の一つに掲げています。誰も僕が主演俳優になれるとは思っていませんから。僕自身も思っていませんし(笑)。それがなってしまったら面白くないですか? あぁ、楽しみだなぁ……。

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