『家売るオンナの逆襲』北川景子にとって“家を売る”とは何か? コミカルさに包まれた作品の本質

『家売るオンナの逆襲』“家を売る”とは何か?

 さて、そんな巴に提示した三軒家(北川景子)の解決策は、巴がネットカフェのオーナー兼住人になってはどうかというものだった。そうすることで、同じようにネットカフェを頼りにする人々と生きることができ、潤いのある自分の人生を再び作り上げることができると、三軒家は考えたのだ。

 もちろんこれはフィクションである。ただ、“新たな住居と同時に新たな人生を掴ませる”という、いかにも『家売るオンナ』らしいこの方法はどこか清々しさを感じさせるものだ。本人の生き方をできるだけ考慮して、最も適した家を売るということ。上記の第2話に限らず、第1話に登場した、苦悩を抱えるYouTuberしかり、第3話のトランスジェンダーとその家族しかり、三軒家は画一的な考えに縛られずに、多様な生き方を可能な限り尊重している。当たり前すぎる事実かもしれないが、“家の数だけ人間の生き方がある”ということなのかもしれない。

 とはいえ、三軒家が繰り返し言っているように、彼女の仕事はあくまで“家を売る”ことである。人々の悩みを晴らすことが、彼女の第一の仕事ということではない。彼女にとって、毎話で顧客の生き方に目を向けることは、“家を売る”ために必要なことなのだ。ただ、本作を観ている限りでは、家を売ることと、顧客の人生そのものを考えることは、実はとても近いところにあるように思える。

(文=國重駿平)

■放送情報
『家売るオンナの逆襲』
日本テレビ系にて、毎週(水)22時〜放送
出演:北川景子、松田翔太、工藤阿須加、イモトアヤコ、鈴木裕樹、本多力、草川拓弥、長井短、千葉雄大、臼田あさ美、梶原善、仲村トオル
脚本:大石静
主題歌:斉藤和義「アレ」(スピードスターレコーズ)
音楽:得田真裕
演出:猪股隆一、久保田充
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:小田玲奈、柳内久仁子(AXON)
協力プロデューサー:水野葉子
制作会社:AXON
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/ieuru_gyakushu/
公式Twitter:@ieuru2016

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