『僕の初恋をキミに捧ぐ』なぜ映画からTVドラマへ? “少女漫画実写化ブーム”にも変化が

『僕キミ』から考える少女漫画実写化

 いわば、原作の持つテーマをより洗練した形で抽出することができる「映画」と、原作に忠実にキャラクターやエピソードなどを満遍なく描写することができる「テレビドラマ」という“それぞれの良さ”という違いである。現にこの『僕の初恋をキミに捧ぐ』も、映画版では子ども時代から中学時代の仲睦まじい主人公カップルを描き、高校時代を中心に2人の物語にフィーチャーしていく純愛ラブストーリーとしての強固とした側面を持つ一方で、原作漫画に登場した一部のキャラクターの描き込みが薄くなったり、はたまたカットされたりするなど、映画の特性上避けられなかった部分が多々あったことは否めない。

 しかし今回のドラマ版では、映画版と同様に一部に設定変更が加えられているとはいえ、より原作に近く、多くの要素を映像化できる土壌が備わっているわけだ。それに加えて、主人公2人にフォーカスを置きながらも周囲のキャラクターをしっかり描けるという強みを活かし、主演の2人に加えて宮沢氷魚や佐藤寛太、岐州匠、福本莉子といった将来性豊かな若手キャストたちのアンサンブルという見どころを生み出す。ある意味では、これまで若手キャストを輩出する役割を果たしてきた少女漫画原作映画のブームが下火になっていることも相まって、その役目がテレビドラマへシフトしたということも考えられるだろう。映画よりも確実に出番が多くなるだけに、そのシフトチェンジは非常に合理的だ。

 そう考えると、あまりにも大量生産されて原作ファンから批判的な意見や、業界内でもメリットが少ないと思われ始めている少女漫画原作の“キラキラ映画”に代わり“キラキラドラマ”なるものが主流になる日も近いのかもしれない。ましてや、この「土曜ナイトドラマ」枠は7話完結が通例なだけに、ある程度洗練された物語でテーマを薄めることなく、キャラクターやエピソードをしっかりとすくい上げる余裕もある。本作も第1話の時点で、非常に良い実写化の形が生まれることを予感させてくれただけに、今度はブームの橋渡しではなく、新たなブームを生み出す作品となるのではないだろうか。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『僕の初恋をキミに捧ぐ』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:15~00:05放送
出演:野村周平、桜井日奈子、宮沢氷魚、佐藤寛太、馬場ふみか、松井愛莉、矢作穂香、岐洲匠、富田健太郎、福本莉子、是永瞳、真飛聖、児嶋一哉、石田ひかり、生瀬勝久ほか
原作:青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』(小学館刊)
脚本:尾崎将也
演出:宝来忠昭、藤原知之
音楽:富貴晴美
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:神田エミイ亜希子(テレビ朝日)、山本喜彦(MMJ)、森一季(MMJ)
制作:テレビ朝日/MMJ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/bokukimi/
公式Twitter:@bokukimi2019

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