アカデミー賞作品賞は『ROMA/ローマ』が最有力? 例年以上に“大混戦”な情勢を読む

第91回アカデミー賞を占う

 さて、それらの要素を踏まえた上で今年の作品賞候補作を見てみると、製作者組合賞受賞作でゴールデングローブ賞作品賞<コメディ・ミュージカル部門>受賞の『グリーンブック』は監督賞にノミネートせず。これは、ピーター・ファレリーがかつてコメディ映画に特化した監督として名を馳せていた際に起こした、あまりにも情けない失態がノミネート投票期間中に明るみに出たためとの見方が強い。そしてゴールデングローブ賞作品賞<ドラマ部門>の『ボヘミアン・ラプソディ』は監督賞と脚本賞で候補落ち。両賞ともノミネートされなかった作品賞受賞作は『グランド・ホテル』以降1本もないので、受賞すれば歴史が動くことになる。

『グリーンブック』(c)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

 では、ゴールデングローブ賞監督賞を獲得した『ROMA/ローマ』はどうだろうか。こちらは重要な編集賞で候補落ちとなったが、『バードマン』によって一番最近覆された公式であると同時に、最も作品賞に近い、監督賞での受賞が最有力視されていることがプラス材料。外国語映画賞と作品賞を同一年にノミネートされた作品は過去5作品。いずれも外国語映画賞に輝き、作品賞は落としている。外国語映画として初の作品賞受賞、ないしは初のダブル受賞も可能性充分だが、それを確実なものにするはずだった製作者組合賞で『グリーンブック』に負けたことだけが唯一のネックというわけだ。

『女王陛下のお気に入り』(c)2018 Twentieth Century Fox

 また、重要視される部門全てで候補入りを果たした『女王陛下のお気に入り』『バイス』『ブラック・クランズマン』が逆転候補として有力だが、後2作品は批評家協会賞を含め前哨戦で未勝利。他にも『アルゴ』の時のベン・アフレックを彷彿とさせる、ブラッドリー・クーパー監督賞落選という憂き目を食らった『アリー/ スター誕生』と、マーベル作品初の作品賞候補にあがったこと自体が一つの勝利である『ブラックパンサー』は一歩後退といった見方が強く、前哨戦勝利組を逆転する可能性を秘めているのは『女王陛下のお気に入り』ということとなる(しかし『クラッシュ』や『スポットライト』のようなビビッドなテーマを持つかと言われれば少し微妙なところだ)。『ROMA/ローマ』が本命で、『女王陛下のお気に入り』と『グリーンブック』『ボヘミアン・ラプソディ』の3作が対抗格として続く。以下『バイス』と『ブラック・クランズマン』、『ブラックパンサー』『アリー/ スター誕生』といった順列が、現時点での作品賞レースの情勢だ。

『ブラックパンサー』(c)Marvel Studios 2018

 もっとも、他の部門は比較的安定した様子。ポーランドのパヴェウ・パヴリコフスキがサプライズ候補入りを果たした監督賞は、アルフォンソ・キュアロンが最有力のまま動かず、主演男優賞は前哨戦圧勝のイーサン・ホークが外れたことでラミ・マレックVSクリスチャン・ベールの戦いに。主演女優賞は、グレン・クローズ悲願の達成VSオリヴィア・コールマンの開花に注目が集まり、助演部門は前哨戦通り、マハーシャラ・アリとレジーナ・キングで人種のバランスを取ることとなるだろう。

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