見事なスタートダッシュをきった『マスカレード・ホテル』 目指すは2015年版『HERO』超え!?

『マスカレード・ホテル』見事なスタート

 2007年の公開時、その6年前の最初のテレビシリーズ放送時以来の現象を巻き起こした映画版『HERO』1作目(累計興収81.5億円)に届くのは難しいとしても、今回の『マスカレード・ホテル』の出足は2015年版『HERO』(累計興収46.7億円)の記録を十分に射程内に収めるもの。ご存知のように、その約3年半の間、木村拓哉にとってはSMAP解散という大きな出来事があり、その際には少なからず逆風が吹いたこともあった。今回の『マスカレード・ホテル』は、それを東宝+フジテレビ+大量プロモーションという「平成のヒットの方程式」で見事に乗り超えたことになる。

 もっとも、「型破りな検事」という、いわば「体制内反体制」のキャラクターを演じていた『HERO』シリーズ(そして、方向性はまったく違えどその要素がさらに暴走していた『検察側の罪人』)と比べると、今回の『マスカレード・ホテル』における「ホテルマンに扮した刑事」というキャラクターは、すっぽりと日本的社会の規範に収まるもの。もし、それも含めて「ヒットの要因」という分析がされて、今後の木村拓哉が演じるキャラクターがより保守的になっていったとしたら、その時には苦言を呈していきたい。長年封印されてきて、今年1月にようやくBlu-rayボックスがリリースされた1997年のドラマ『ギフト』(これもフジテレビだ)を毎晩楽しみに見直している自分のようなオールドファンにとって、役者木村拓哉の魅力はいつだってその「型破り」なところにあるのだ。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『マスカレード・ホテル』
全国東宝系にて公開中
出演:木村拓哉、長澤まさみ、小日向文世、菜々緒、生瀬勝久、松たか子、石橋凌、渡部篤郎他
原作:東野圭吾『マスカレード・ホテル』(集英社文庫刊) 
脚本:岡田道尚
音楽:佐藤直紀
監督:鈴木雅之
配給:東宝
(c)2019 映画「マスカレード・ホテル」製作委員会 (c)東野圭吾/集英社
公式サイト:http://masquerade-hotel.jp/index.html

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる