異例尽くしの『ボヘミアン・ラプソディ』 遂に2018年度興収1位作品の座も確実に

『ボヘミアン・ラプソディ』異例尽くしに

 2019年に入ってからも、元日から安倍首相が昭恵夫人と90歳になる母親を連れ立って『ボヘミアン・ラプソディ』を劇場で鑑賞、1月6日(現地時間)にはクイーンのオリジナルメンバーで同作のエグゼクティブ・プロデューサーであるブライアン・メイが沖縄辺野古の埋め立て反対への署名をソーシャルメディアで呼びかけ、同日(現地時間)のゴールデングローブ賞ではドラマ部門の作品賞と主演男優賞(ラミ・マレック)をダブル受賞と、話題に事欠かない『ボヘミアン・ラプソディ』。ゴールデングローブ賞ではいずれの賞でも(先週末9位から7位に順位を上げている)『アリー/ スター誕生』とブラッドリー・クーパーもノミネートされていて、賞レースでは『アリー/ スター誕生』の方が有利と目されていただけに、少なからず驚きだった。

 というのも、『ボヘミアン・ラプソディ』は、最終的にクレジットされてはいるものの、監督のブライアン・シンガーが撮影途中の休暇から現場に戻らなかったために製作中に解雇。撮影の終盤から仕上げはデクスター・フレッチャーがおこなうという、内幕で大きな騒動があった作品。そうした経緯から当然のように、ゴールデングローブ賞でも主要賞の一つである監督賞にはノミネートもされていなかった。そのような作品がゴールデングローブのような大きな賞で作品賞を受賞するのは極めて異例のこと。2月24日に授賞式がおこなわれるアカデミー賞ではどうなるかはわからないが、『ボヘミアン・ラプソディ』への鳴り止まない称賛は、「映画にとって監督の役割とは?」という現代的な問題を突きつけるものでもあるのだ。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『ボヘミアン・ラプソディ』
全国公開中
監督:ブライアン・シンガー
製作:グレアム・キング、ジム・ビーチ
音楽総指揮:ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー
出演:ラミ・マレック、ジョセフ・マッゼロ、ベン・ハーディ、グウィリム・リー、ルーシー・ボイントン、マイク・マイヤーズ、アレン・リーチ
配給:20世紀フォックス映画
(c)2018 Twentieth Century Fox
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/

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