ムロツヨシが2019年も心に棲みつく? 誰もが魅了される“粋な男”

2019年もムロが心に棲みつく?

 ありがたいことに『大恋愛』については、収録現場も取材することができた。そこでのムロツヨシは、いつも演出家の金子文紀と共に、大石静による脚本の行間を読み解こうと探っていた。例えば、真司が尚に別れを告げるシリアスなシーン。尚の幸せを願って、若年性アルツハイマー病の権威で元婚約者の侑市(松岡昌宏)に託したほうがいいと考えたのだろうが、どこかで侑市には治せるけれど、自分には何もできないというコンプレックスも入っているのではないか。台本には「別れよう」のひとことのみだったが、その背景に流れる真司自身もうまく整理できていないかもしれない複雑な感情を理解しようとする。その作業を、ムロツヨシは“落とし込む”と表現していた。

 その“落とし込む”作業を楽しむことこそ、「好きにやっていいよ」の本質なのだろう。原作者や脚本家の思い描いた世界を、監督や演出家がどう形にするかを考え、そして俳優たちが体現する。それぞれが安心して「好きにやっていいよ」といえる信頼感があってこそ、いい作品が生まれるのだから。ムロツヨシの落とし込み作業は、一つひとつ確認を取りながら進めていく。非常に紳士的だった。そんな“丁寧な作業”の上に、戸田とのアドリブ満載なイチャイチャシーンといった“遊び心あふれる仕事”を見せられたら、それを“粋”と言わずになんと言えばいいのだろうか。

 今考えてみたら、『大恋愛』と『今日から俺は‼』を同時期に出演するなんて仕事ぶりそのものも、なんと粋な話ではないか。否が応でもバイタリティを見せつけられるというものだ。先日出演したニンゲン観察バラエティ『モニタリング』(TBSテレビ系)でも、次々と仕掛けられるドッキリに、誰も傷つかない見事な切り返しを披露し、そのアドリブ力が称賛された。また、Twitterでは、これまで共演してきた俳優仲間の誕生日を縦読みで祝ったり、ドラマ放送日には自身でチェックした感想と共演者を称えるコメントを添えるなど、これまた粋な一面が垣間見える。

 ムロツヨシが、粋な男であることが改めて発見された2018年。そして、今年はさらに男前な一面を見せてくれそうだ。3月にはテレビ東京開局55周年特別企画 ドラマスペシャル『二つの祖国』(テレビ東京系)に出演することが発表された。主演の小栗旬から「この役を演じるにあたって、主演の小栗君から“ムロさんなりにやってほしい”と言ってもらいました」とコメントも寄せているムロツヨシ。すでに「好きにやって」の信頼関係が気づかれた共演者とのライバル役にどんな名演技が生まれるか楽しみだ。

 そして、「どうか今回ばかりは笑わない準備をして、役者・ムロツヨシを見ていただきたいと思います」とも。ああ、2019年も、まだまだ私たちが気付いていないムロツヨシの魅力が見つかってしまうかもしれない。

(文=佐藤結衣)

■リリース情報
『大恋愛〜僕を忘れる君と』
2019年3月27日(水)Blu-ray BOX発売
価格:24,000円+税
脚本:大石静
プロデューサー:宮崎真佐子、佐藤敦司
演出:金子文紀、岡本伸吾、棚澤孝義
出演:戸田恵梨香、ムロツヨシ、富澤たけし(サンドウィッチマン)、杉野遥亮、木南晴夏、小池鉄平、黒川智花、橋爪淳、夏樹陽子、草刈民代、松岡昌宏
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
発売元:TBS
販売元:TCエンタテインメント
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/dairenai_tbs/

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