小栗旬、綾野剛らの海外進出に見る、日本人俳優の持つ可能性

 そして昨今はこんな変化も生まれているという。2006年にアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作『バベル』でハリウッドデビューを飾って以降、日本と海外を股にかけて活躍中の菊地凛子は、インタビューで「従来なら日本人俳優は、日本人であることがはっきりしている役と、ぼんやりとアジア系であるという役のどちらかを演じていましたが、最近は役名がまるで欧米人という役も増えています。つまり、アジア系であることを重視していない役まで演じられるチャンスが増えているように感じています」(NIKKEI STYLE|菊地凛子 米国ドラマの現場で求められるのは瞬発力)と語っている。これまで欧米人(もしくはそれ以外の人種)のみが演じられた役が、日本人にも門戸が開かれるようになった。これは人種のバイアスなしに演技で勝負できる環境ができたことと同義だ。しかし一方で それは“日本人”らしい芝居をしないことでもあり、語学力も一層問われることになる。こうした変化は今後海外進出を目指す日本人俳優たちにとって大きなチャンスであり、ハードルともなり得るだろう。

 大舞台に挑戦したい気持ちは役者のみならず表現を生業にする者なら誰でも持っているもの。日本の限られた制作現場を飛び出して、よりチャレンジングな環境で自分を試したいと思う俳優は今後もますます増えていくことと思う。中でも小栗は人気実力ともに、30代の俳優を代表する存在。その彼が海外へ目を向けたとなれば、後に続く面々も多いことだろう。そしてそういった人材が増えていけば、日本のエンターテインメント業界にも新しい刺激がもたらされるに違いない。

■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。

■公開情報                              
『ゴジラVSコング(邦題:未定、原題:Godzilla vs. Kong)』
監督:アダム・ウィンガード
脚本:テリー・ロッシオ
出演者:アレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン、レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、小栗旬、エイザ・ゴンザレス、ジュリアン・デニソン、カイル・チャンドラー、デミアン・ビチル
製作:ワーナー・ブラザース、レジェンダリー・ピクチャーズ
日本配給:東宝
(c)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

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