初登場1位は『ドラゴンボール超 ブロリー』 作品至上主義を貫く東映の手法とは?

作品至上主義を貫く東映の手法とは?

 劇場版『ONE PIECE』でシリーズ最高興収を記録した『ONE PIECE FILM Z』も手がけてきた今作の監督の長峯達也のインタビュー(劇場パンフレットより)によると、「僕が直接鳥山明先生とお話したのは、0号試写の時だけで、制作前にはお話してないんですよ。ですから、鳥山明先生の書かれた脚本自体が、『ちゃんとやれよ』というメッセージだと受け取りました」とのことなので、その内幕はなかなかミステリアス。ちなみに鳥山明は本作についてのコメント(同じく、劇場パンフレットより)で「ブロリーはずいぶん昔、東映アニメのオリジナルストーリーで、キャラデザインだけは僕が描いたようですが、内容は簡単に聞いただけのようで、すっかり忘れていました」と、その天然ぶりを披露している。それでこんなに充実した脚本を仕上げてしまうのだから恐れ入るしかない。

 今や『ドラゴンボール』シリーズは完全なグローバル・コンテンツ。フランク・オーシャンをはじめ、アメリカのラッパーやシンガーなどからも度々リリックに引用されることがあるドラゴンボール用語だが、特に中南米における『ドラゴンボール』人気は絶大で、2013年以降の現行の劇場版シリーズ作品は中南米の各国で軒並み年間興収の上位にランクインしているほど。「毎年同じ時期に作品を公開する」という手法をとっていないのには、世界基準で考えてみればそちらの方が理にかなっているという側面もあるかもしれない。

 東映は先日、中国の大手映画会社Bona Film Groupと協力して日中合作映画として『西遊記』をモチーフとした『The Monkey Prince(仮)』(『ドラゴンボール』とルーツが少々被っているように思える企画だが……)を製作することも発表。東映、というか東映アニメーションは、日本の映画界において「世界との距離」という意味では最も「近い」場所にいる。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
映画『ドラゴンボール超 ブロリー』
全国公開中
原作・脚本・キャラクターデザイン:鳥山明
監督:長峯達也
作画監督:新谷直大
音楽:住友紀人
美術監督:小倉一男
色彩設計:永井留美子
特殊効果:太田直
CGディレクター:牧野快
製作担当:稲垣哲雄
製作:「2018 ドラゴンボール超」製作委員会
配給:東映
配給協力:20世紀フォックス映画
(c)バードスタジオ/集英社 (c)「2018ドラゴンボール超」製作委員会
公式サイト:http://www.dbmovie-20th.com/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる