岡田将生が竜星涼と成海璃子に繋いだバトン 『昭和元禄落語心中』が描いた強い絆と芸の力

『昭和元禄落語心中』が描いた芸の力

 その約束とは「ふたりで落語の生き残る道を作る」というもの。助六と果たせなかったこの約束を与太郎と再び交わしたのが本作の第1話だった。そこから50年以上が経ち、与太郎は九代目八雲を襲名、小夏は女性真打として実力をつけた。さらに孫の信之助も二ツ目の落語家として修行中だ。

 孤独を選んだはずだった八雲だが、自分の芸をしっかりと次の世代へと継承することとなったのは、家族という自分の居場所を見つけられたから。家族がいることで苦しんだこともあったが、最終的には、与太郎たちのおかげで八雲は笑いながら最期を迎えられた。かつて八雲ひとりによって支えられていた落語界は、とても危ういものだった。与太郎の言った「たった一人で滅ぼせるなら、たった一人でも繋いでいける」というセリフはポジティブな与太郎らしい考え方だ。

 九代目八雲の襲名披露で「死神」をかける与太郎とそれを見届ける八雲、助六、みよ吉の3人のカットで本作は幕を閉じた。八雲と助六が先代から落語を教わり、与太郎たちに受け継いだように、時代が変わろうが芸はしぶとく、先人の生き様として繋がっていく。ラストの「死神だよぉ」という与太郎のセリフとリンクする八雲の口元にはそんな途切れることのない強い絆と芸の力が表れていた。

(文=馬場翔大)

■放送情報
ドラマ10『昭和元禄落語心中』
NHK総合にて、毎週金曜22:00~放送
出演:岡田将生、竜星涼、成海璃子、大政絢、山崎育三郎
脚本:羽原大介
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama10/rakugo/index.html

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