ロックバンドの伝記映画は鬼門? 過去データから『ボヘミアン・ラプソディ』の「奇跡」を探る

『ボヘミアン・ラプソディ』の「奇跡」を探る

 しかし、日本公開されればまだいい方。歴代4位の作品『I Can Only Imagine』にいたっては、今年の作品にもかかわらず未だ日本公開もされていない。もっとも、オクラホマ出身のクリスチャンロックのバンド、マーシーミーの2001年の代表曲「I Can Only Imagine」の誕生秘話を描いた作品と言われても、ほとんどの人は「知らんがな」と言うしかないだろう(自分もそうです)。

 その『I Can Only Imagine』を除くと、ロックバンドを描いた「音楽ものの伝記映画」で上位に顔を出しているのは、先週の同コラムでも触れたドアーズの『ドアーズ』(1991年)とビーチ・ボーイズの『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(2015年)くらい。ちなみに前者が「音楽ものの伝記映画」歴代15位、後者が歴代22位。いずれも、ギリギリ「ヒット作」と呼べる程度の結果しか出していない。そう考えると、『ボヘミアン・ラプソディ』がいかに特別な作品であるか、そして、このような「ロックバンドの伝記映画」がいかにハードルの高い企画であるかがわかるだろう。今回『ボヘミアン・ラプソディ』は大成功を収めたが、もしこれに便乗してハリウッドで「あのバンド」や「あのバンド」で新たな企画が動いているとしたら、製作サイドはそのことを肝に銘じておくべきだ。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」ほかで批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)、2018年11月28日発売。Twitter

■公開情報
『ボヘミアン・ラプソディ』
全国公開中
監督:ブライアン・シンガー
製作:グレアム・キング、ジム・ビーチ
音楽総指揮:ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー
出演:ラミ・マレック、ジョセフ・マッゼロ、ベン・ハーディ、グウィリム・リー、ルーシー・ボイントン、マイク・マイヤーズ、アレン・リーチ
配給:20世紀フォックス映画
(c)2018 Twentieth Century Fox
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/

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