木村佳乃、逆境に立ち向かう強さを見せる 『あなたには渡さない』ドロドロ愛憎劇の幕開け

『あなたには渡さない』愛憎劇の幕開け

 新生「花ずみ」は評判を呼ぶ。ビジネスに携わったことのない通子らしい発想で、オープン初日から3日間、無料で料理が振る舞われた。思い切ったやり方ではあるが、旬平の料理と、通子の庶民的で親しみのある雰囲気は客の心を掴む。かつての「花ずみ」から想像される格式高い雰囲気はないかもしれないが、後ろを振り返らない通子の性格が功を奏したようだ。トラブルに見舞われても、通子は通子らしさを失わない。彼女ならではの発想で言葉を返し、その場を切り抜けていく。新生「花ずみ」を陥れようとする者は「花ずみ」の内側にも外側にもいる、そんな描写が織り込まれた第2話の中で、通子だけが、変わらず前を向いて突き進む、そんな予感がした。

 とはいえ、女同士の争いはよりいっそう激しくなる。多衣への借金をはじめて返済する日、多衣は金沢ではなく東京に部屋を借りていた。多衣と対峙する通子の前に現れたのは、「多衣が忙しくて会えていない」と話していた旬平だった。「花ずみ」の抱えた負債を背負わせないための偽装離婚だと信じていた通子にとって、旬平の心は多衣に向いている事実は痛烈だったことだろう。旬平の顔を見た通子は、多衣から愛人だと明かされたときのように激しいショックを受ける。旬平と多衣を見つめる通子の目は、彼女たちの関係をその目で確かに認識したことで、より強い恨みに満ち満ちていた。しかし彼女は、その恨みを糧に前へ前へと突き進む。

 第2話では、多衣に旬平の母が譲ったと思われていた帯が、本当は「通子に渡してほしい」と手渡されていたことや、通子を密かに思う笠井(田中哲司)と多衣が通じ合っていることなど、真意が掴めない新事実が露見した回でもあった。通子の凛とした強さが確立されていくと同時に、よりいっそうドロドロとした愛憎劇が展開することだろう。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
土曜ナイトドラマ『あなたには渡さない』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:15〜放送
出演:木村佳乃、水野美紀、田中哲司、萩原聖人ほか
原作:連城三紀彦『隠れ菊』(集英社文庫刊)
脚本:龍居由佳里
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:川島誠史(テレビ朝日)、清水真由美(MMJ)
演出:植田尚、Yuki Saito
制作:テレビ朝日/MMJ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/anawata/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる