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『ボヘミアン・ラプソディ』爆発的ヒット! 勝因は「クイーン中心史観」と「イベントムービー化」

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 本作『ボヘミアン・ラプソディ』では、先に挙げたような同時代の他のバンドの名前は出てくるし、街の風景やスタジオの設備や衣装などの時代考証こそしっかりされているものの、その当時の音楽シーンの描写は最小限。バンドが結成された70年代前半から作品のクライマックスとなる「ライヴ・エイド」が開催された1985年まで、ロック史的にはある意味で傍流に位置してきたクイーンだが、本作はあくまでも「クイーン中心史観」に基づいて作劇されている。それによって、史実に基づいた伝記映画でありながらも、寓話性、神話性を持った作品に昇華されているのだ。本作のタイトルはロックにオペラの様式を大胆に導入したクイーンの代表曲からとられたものだが、それは単に彼らの最も有名な曲の一つであるから、あるいはその制作からリリースにいたるまでのエピソードが作品の中盤でたっぷり描かれているからだけでなく、本作全体がある種のオペラ的なトーン&マナーでドラマティックにまとめあげられていることを示している。

 その上で、本作のラストを飾る約21分間に及ぶ「ライヴ・エイド」のステージを「作品の見所」として明確に設定し、本作をロックバンドの単なる伝記映画ではなく、過去に大ヒットしたミュージカル映画に連なるようなイベントムービーとして宣伝したその方法論も見事だ(本国からの指示なのか、日本独自の方針なのかはわからないが)。もともと、日本はクイーンがブレイクするきっかけとなった国で、作中でその裏話も描かれてはいるものの、日本ロケを敢行しているわけではないのでその描写自体はかなり肩透かしなものに終わっている。しかし、それを補って余りある全体の満足感。作品の仕上がりからすれば納得の大ヒットだが、必ずしもそういう作品がヒットするとは限らないわけで、今回はすべての歯車がぴったりと合った会心の結果となった。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」ほかで批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)、2018年11月28日発売。Twitter

■公開情報
『ボヘミアン・ラプソディ』
全国公開中
監督:ブライアン・シンガー
製作:グレアム・キング、ジム・ビーチ
音楽総指揮:ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー
出演:ラミ・マレック、ジョセフ・マッゼロ、ベン・ハーディ、グウィリム・リー、ルーシー・ボイントン、マイク・マイヤーズ、アレン・リーチ
配給:20世紀フォックス映画
(c)2018 Twentieth Century Fox
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/

      

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