『エウレカセブン』劇場版第2弾『ANEMONE』渡辺マコトPが語る、制作の裏側と完結編への展望

『ANEMONE』渡辺Pが語る制作の裏側

「リスペクトしているカルチャーに立ち戻っていきたい」

ーーその意図で『ハイエボ1』では、ビームス夫妻がフィーチャーされました。TVシリーズでも重要なキャラクターではありましたが、2人を通して、「レントンが大人になる」という過程がより明確に示されていたと感じました。

渡辺:ありがとうございます。『ハイエボ』は演出的には様々な仕掛けが入ってはいるのですが、そのテーマはとてもストレートで普遍的だと思っています。『ANEMONE』では、アネモネとその父親はとても強い絆で結ばれた親子であって、その絆を支える人物としてドミニクが登場します。僕は、アネモネとドミニクは「異性」というよりも、「兄妹」だと思っています。ドミニクがなぜこれだけ身を費やしてアネモネをサポートするのか。そういった部分に隠されている思いも、作品のテーマに繋がると思います。僕も毎回目頭が熱くなるのですが(笑)、アネモネと父親の親子の繋がり、強い絆というのは、この作品で一番監督が伝えたい部分だと僕は受け取りました。

ーーレントンもアネモネも父親を亡くしながら、肉親ではない人たちと出会い、助けられながら学んでいくという。エウレカはそもそも親がいないので、次作ではどうなるのでしょうか……。

渡辺:そこは我々にとっても課題かもしれませんね(笑)。人間における“親子”のような関係が、コーラリアンであるエウレカにはないので。だからこそエウレカにとってレントンは大きい存在なのだと思いますし、『ANEMONE』におけるアネモネに対するエウレカの行動原理も、そういう繋がりの有無と関係しているのかなと。


ーー音楽面についても聞かせてください。『ハイエボ』には、ドイツのテクノユニットHardfloorが新曲「Acperience 7」を挿入曲として提供しています。おそらく2005年の放送開始当時、クラブミュージック、テクノミュージックなどのクラブカルチャーをあれほど大胆にアニメに取り入れたのは『エウレカセブン』が初めてだと思いますが、今回、主題歌に15歳のRUANNさんを起用した理由は?

渡辺:『ANEMONE』ではアネモネが主人公、しかも舞台が現代であり東京ということで、アネモネと年が近い方に、同世代の女の子の気持ちを歌ってもらえたら、というのが我々の希望でした。

ーー音楽以外でも、『エウレカセブン』ならではのサブカルチャーからの引用がありましたが、今回もそういった小ネタはあるのでしょうか?

渡辺:『エウレカセブン』ファンの方なら聴きたい曲が、とあるポイントでかかるということはお伝えしておきます(笑)。ただ、京田監督、吉田さん、佐藤さんとも話していたのですが、TVシリーズ放送時は、アニメーション自体がサブカルチャーでしたが、今は一気にメインカルチャーと言っても差し支えないほどの存在感を持つようになった。つまり、カルチャーにおけるアニメの立ち位置が変わってきたのです。先ほどおっしゃっていただいたように、『エウレカセブン』がクラブカルチャーなどをアニメに取り入れたパイオニアだとしたら、それから今に至るまで多くの人が取り入れきたので、もはや普通になってしまったのかなと。だとしたら、今は自分たちの原点であり、リスペクトしているカルチャーに立ち戻っていきたい。今回はそういった視点から楽曲を選んでいます。


ーー次作で完結となりますが、どんな作品になりそうですか?

渡辺:まだ言えないことばかりですが(笑)、レントンとエウレカが再会する話になることは間違いありません。そこに加えて、『ANEMONE』では『交響詩篇エウレカセブン』の世界と現代の世界が繋がったのでいろんなキャラクターが同じフィールドに出てくることになる。彼らが一堂に会して描かれる物語が見どころになるかと思います。

(取材・文=石川雅文)

■公開情報
『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』
全国公開中
キャスト:小清水亜美、名塚佳織
監督:京田知己
脚本:佐藤大
キャラクターデザイン:吉田健一、藤田しげる、倉島亜由美
配給:ショウゲート
(c)2018 BONES/Project EUREKA MOVIE
公式サイト:http://eurekaseven.jp/

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