趣里の演技は観る者の想像力をかきたてる 『僕坂』『生きてるだけで、愛。』真逆の役を好演

趣里の演技は観る者の想像力をかきたてる

『生きてるだけで、愛。』(c)2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会

 そんな彼女の独特の魅力がほとばしるエモーショナルな映画『生きてるだけで、愛。』が11月9日より公開となった。自分にも他人にも嘘がつけず、まっすぐ過ぎるゆえにエキセントリックな言動に走ってしまうヒロインの寧子を趣里が繊細に演じ、強烈な印象を残す。

 鬱が招く過眠症のせいで引きこもり状態が続き、出版社でゴシップ記事の執筆に明け暮れる津奈木(菅田将暉)と同棲3年になる寧子。家事もせず、電気を使いすぎてはブレーカーを落とすという日々の中で、津奈木の元恋人、安堂(仲里依紗)が現れたことから同棲生活に変化が訪れる。

 誰かに自分を理解してほしい、ちゃんとつながっているという実感がほしいと切実に願いながらも、愛することにも愛されることにも不器用で、関係を自ら壊してしまう寧子。難しい役柄を趣里は突き抜けた演技で表現していく。痛々しくもあり、ふてぶてしさも存分にある寧子に共感せずにはいられないのは、彼女の魂の叫びが心に響くからなのだろう。

『生きてるだけで、愛。』(c)2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会

 イギリス・ロンドンで開催された第26回レインダンス映画祭の質疑応答で、趣里は「10代の頃にケガでバレエをやめなくてはいけなくなり、それでも生きていかなくてはならないという辛い経験をしたことが寧子を演じるにあたり、自分の中で重なった」と語っていた。(参照:『生きてるだけで、愛。』趣里&関根光才監督が英レインダンス映画祭に参加

 一見か弱そうに見える彼女独特の力強さというのは、経験に基づいた自信からくるものなのだろう。ただ美しいだけではないエキセントリックで刺激的な女性を演じ、毒がある役に奥行きを持たせ、観る者の想像力をかきたてる女優。型にはまることなく、進化を続けてほしい存在である。

■池沢奈々見
恋愛ライター、コラムニスト。

■放送情報
金曜ナイトドラマ『僕とシッポと神楽坂』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15(一部地域で放送時間が異なる)
出演:相葉雅紀、広末涼子、趣里、小瀧望(ジャニーズWEST)、大倉孝二、村上淳、矢柴俊博、矢村央希、 かとうかず子、イッセー尾形
原作:たらさわみち『僕とシッポと神楽坂』(officeYOU 集英社クリエイティブ)
脚本:谷口純一郎、国井桂
監督:深川栄洋
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/shippo/

■公開情報
『生きてるだけで、愛。』
新宿ピカデリーほかにて公開中
出演:趣里、菅田将暉、田中哲司、西田尚美、松重豊、石橋静河、織田梨沙、仲里依紗
原作:本谷有希子『生きてるだけで、愛。』(新潮文庫刊)
監督・脚本:関根光才
製作幹事 :ハピネット、スタイルジャム
配給:クロックワークス
(c)2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会
公式サイト:http://ikiai.jp

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる