まだ続いていた!? 『コナン』vs『コード・ブルー』、年間興収1位をめぐる死闘は最終ラウンドに

年間興収1位をめぐる死闘は最終ラウンドに

 『億男』の苦戦は今年の東宝配給実写作品の低調をさらに印象づける結果となったが、その中で例外的な特大ヒットを記録して年間興収ランキング1位をほぼ手中に収めたと思われていた『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』に、思わぬ伏兵が現れた。先週末、動員ランキングでは9位、しかし興収では3位の数字をあげた『名探偵コナン ゼロの執行人』の4Dアトラクション上映だ。10月21日(日)の時点で『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』の累計興収は約91億8000万円、『名探偵コナン ゼロの執行人』の累計興収は88億6000万円。その差は約3億円という僅差にして、客単価が高い『名探偵コナン ゼロの執行人』の4Dアトラクション上映は3週間限定の予定。公開から4か月が過ぎようとしている『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』の方も、今週の10月26日には第4回感動共有上映(体験したことがないし、これからもすることはないだろうからよくわからないのだが、上映中に隣の客と話し合って「感動」を「共有」してもいい上映形式なのだという。そうじゃなくても、たまにそういうお客さんはいるけれど……)を開催するなど、まだまだ上映中。ここにきて、年間興収1位をめぐるデッドヒートが俄然熱を帯びてきた。

 たまたま数字が極端に接近しているので、うがった見方をしてしまいがちだが、『名探偵コナン』シリーズで4Dアトラクション上映がおこなわれるのは、前々作『名探偵コナン 純黒の悪夢』に続いてこれが2回目のこと。今回は人気キャラ安室が運転するクルマの助手席に乗っているように感じられるカーアクションが売りとのことだが、この時期に4Dアトラクション上映されることは以前から予定されていた。そもそも『劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』と『名探偵コナン ゼロの執行人』は同じ東宝配給作品でもあるので、そこに対立の構図を見いだすのは両作品のファンと自分のような野次馬だけかもしれない。もっとも、「作品を応援するために劇場に何度も足を運ぶ」といった行為は、現代のファンダムにおいてしばしば見られる現象(音楽では、SMAP解散時や安室奈美恵引退時には特典などとはまったく関係なく、熱心なファンが同じ過去のCDを何枚も買うようなこともあった)。配給の東宝が大っぴらにそれを煽ることはないだろうが、年間1位を巡る争いは両作品のファンの行動に火をつける可能性は十分にある。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■公開情報
『名探偵コナン ゼロの執行人』4DX上映
期間限定公開中
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:立川譲
脚本:櫻井武晴
音楽:大野克夫
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、古谷徹 ほか
配給:東宝
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
(c)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
公式サイト:http://www.conan-movie.jp/

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