静の有村架純と動の戸田恵梨香 『中学聖日記』『大恋愛』2人のヒロインは恋への勇気をくれる

静の有村架純と動の戸田恵梨香

 一方、『中学聖日記』のヒロイン、聖役の有村架純は、映画『ビリギャル』(2015年)で偏差値を上げるために奮闘する女子高生、映画『ナラタージュ』では高校時代の教師との恋愛に悩む女子大生など、生徒役はさまざま演じてきたが、今回初めて教師役に挑む。しかも、教師という職業に夢を抱き、理想の教師となるべく教壇に立つ初々しさは、聖に恋する黒岩くん(岡田健史)でなくても放っておけない甘やかな魅力を放つ。

 本作の場合、教師と中学生の禁断の恋ということで、「ありえない」と批判的な声があるのは事実だが、その非現実性の中に純粋な夢だったり、憧れだったり、尊いものが潜んでいることもある。そもそも、純粋な愛情は儚く、崩壊しやすいものだ。だからこそ、美しかったりもする。そんな儚くて危うい愛情に戸惑いつつも、現実的に踏みとどまろうとする健気さ。動ではなく静、受け身の芝居でより輝くのは彼女自身の包容力からくるものだろうか。

 倫理的で真面目な人ほど他人に対しても自分に対しても厳しく、生きづらさを抱えている。そんな厳しい目を持つ大人が見ても、応援してくなるヒロインを繊細に演じる有村架純。彼女が見つめる先にあるもの、彼女は何を求めていくのか、今後の展開も静かに見守らなければという気持ちにさせられる。

 実際に禁断の恋愛に足を踏み入れるのはリスクがあり、危険が伴う。頭では分かっていても気持ちが動いてしまうから人は恋愛に悩むのであって、その恋愛の面倒で厄介な部分を肯定してくれるヒロインに勇気づけられる人も多いはずだ。

■池沢奈々見
恋愛ライター、コラムニスト。

■放送情報
『中学聖日記』
TBS系にて、毎週火曜22:00~23:07放送
出演:有村架純、岡田健史、町田啓太、マキタスポーツ、夏木マリ、友近、吉田羊、夏川結衣、中山咲月
原作:かわかみじゅんこ『中学聖日記』(祥伝社フィールコミックス)
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、坪井敏雄
主題歌:Uru「プロローグ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/chugakuseinikki_tbs/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる