長谷川博己の拷問シーンから“食”を紐解く お腹も心も満たされる『まんぷく』の意味

拷問シーンから紐解く『まんぷく』の“食”

 本作は、“食”が重要なテーマの1つとなっている。萬平が幸せそうに何かを食べているシーンといえば、もちろん福子とラーメンを食べた時のあのシーンだ。相手が福子ということもあったのだろう。あの時の萬平は本当に楽しげだった。“美味しいもの”を、“好きな人”と食べること。獄中での萬平はその真逆の状況にあって、“まずいもの”を、“好きな人がいない中で”食べたのだ。恐ろしいくらいの対比である。

 単に生きるだけならば、最低限何かを食べられれば十分なのかもしれない。1人でいいという人だっていて良い。ただ少なくとも萬平に関して言えば、よりワクワクしながら、より心温まる食事をすることに価値を見出していてもおかしくない。釈放後、萬平はようやく温かい食事に戻ることができた。福子の作った芋の料理を口にする彼の顔色からは、どこか安心が垣間見えたものだ。大好きな福子のそばで、美味しい食事を口にできる。何気ない食事シーンであったが、ようやっと獄中での“真逆の状況”から戻ってきたなと、見ていてホッとした。これこそまさしく『まんぷく』だな、と。本作は、インスタントラーメンの発明を描く物語であるという。“食”は今後もきっと大切な要素となっていくことだろう。

 本作のタイトルには、一般的な“満腹”に加えて、“福=幸せでいっぱい”という意味で“満福”の願いも込められているという。腹が一杯になれさえすればそれでいいということではない、同時に福も満たされて“まんぷく”なのだとすれば、素敵なタイトルだ。今週は冒頭で述べたように、萬平にまつわる暗いシーンが続いた。それでも、そんな悲惨なシーンをあえて描くことで、“食”についての本作の大切な価値観が暗に示されたとも言えよう。

(文=國重駿平)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平/桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、橋爪功、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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