戸田恵梨香の笑顔がずっと続いてほしい 『大恋愛』が描く“いのちの限り愛する”こと

『大恋愛』が描く“いのちの限り愛する”こと

 スペックで語れる恋は、同じような他の誰かでも代わりがきく。体型、職業、年収……それは加齢と共に失われやすいものでもある。尚が侑市のもとをあっけなく去ったのも、それをどちらの親も引き止めなかったのも、きっと尚の代わりになる結婚相手は他に見つかると思ったからだ。

 しかし、真司との恋は違う。ひとつのことを一緒に笑えること。逆に違う視点を楽しめること。そんな他愛もないやりとりを、窓を拭きながらも思い出してしまうこと。真司は、尚が何歳になっても、どんな仕事についても、貯金がなくなっても、そして記憶がなくなったとしても、尚は尚だと愛せる確信がある。決して代わりなどいないのだ。

 この先、病気が進行すれば、楽しくお酒を飲んだことも、真司にとって初めてのアップルパイを一緒に食べたことも、尚は忘れてしまうかもしれない。だが、考え方によっては何度でも同じ話題で笑える、とも言える。何度でもふたりで初めてを経験できる、とも。愛を知らずに生きてきた真司にとって、今は尚の笑顔こそが生きがいなのだから。その笑い声が消えない限り、どんな病気になったとしても揺らがない。それは病巣を切除しなければならないガンだとしても、歯を失う歯周病だとしても、足がかゆい水虫だろうと、尚は尚であることは変わらないのと動揺に。その人がその人であること、そのものを愛しているのだから。

 だが、この病の難しいところは、何をもって“その人”であると判断するのかというところ。アルツハイマー病は、症状も人それぞれだ。どこまで記憶があることが、尚であるといえるのか。私たちが抱く病の怖さとは、どうなるかわからないという不安からくる。だからこそ、私たちはこのドラマで疑似体験をするのだ。いつか自分の大切な人が、または自分自身が手から記憶がこぼれ落ちていく状況になったとき、どんなふうに生きていけばいいのか。命の限り愛する、とはどういうことなのかを見せてくれる作品になるだろう。

 ちなみに、第2話のラストで繰り広げられた尚と真司のキスをめぐるイチャイチャは、戸田とムロのアドリブだと公式サイトで記載されていた。放送前には中打ち上げとしてスタッフと共に楽しく飲んでいたふたり。まるで実際のカップルのような距離の近さでインスタライブをして、ファンを喜ばせていた。第3話は、そんなふたりのナチュラルで微笑ましいやりとりがたっぷりと堪能できそうだ。コメディを得意とするムロの本領発揮といったところか。尚の笑顔が、ずっと続くことを祈る気持ちで見届けたい。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
金曜ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54
脚本:大石静
プロデューサー:宮崎真佐子、佐藤敦司
演出:金子文紀、岡本伸吾、棚澤孝義
出演:戸田恵梨香、ムロツヨシ、富澤たけし(サンドウィッチマン)、杉野遥亮、小篠恵奈、黒川智花、橋爪淳、夏樹陽子、草刈民代、松岡昌宏
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/dairenai_tbs/
公式Twitter:@dairenai_tbs

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