声優・宮野真守が考える“映画を吹き替えで観る醍醐味” 「キャラクターの全部の動向を観られる」

宮野真守が考える“吹き替えの醍醐味”

ーー細かいところに工夫があるのですね! でも、息って日常生活で意識することのないポイントではないでしょうか。

宮野:確かに(笑)。意識しだすと、どうやって呼吸してるかわかんなくなっちゃいますよね(笑)。だからそこは、お芝居の自然な流れに任せています。もしかしたら実は、呼吸をするということは、お芝居において一番難しい点かも知れませんね。僕はそれを表現していくのがとても好きです。

ーーその呼吸感というものは、最初の『私はケイトリン』の際に習得したのですか?

宮野:そうですね。その時は初めてだらけで、右も左もわからず、声だけで色んなことを表現したことすらなかったんですね。海外の役者さんがもぐもぐ食べているシーンで、その声を吹き替えしなきゃいけなくなったときに、僕はできませんでした。初めてだし、18歳だし……(笑)。ベテラン声優の皆さんは巧みな技を駆使してやっていたんですけど、口の仕組みが全然わからなくて、呆れたディレクターが僕の口の中にみかんを突っ込んで、「これで喋ろ!」みたいな感じで喋って、やっとOKがでました。

ーー吹き替えの道のりは険しいですね……。映画のファンには、吹き替え派と字幕派で両方いますが、宮野さんが思う吹き替えの良さは何でしょうか?

宮野:全部のキャラクターの全部の動向を観られるのが吹き替えの良いところじゃないでしょうか。キャラクターたちは結構細かく話しているし、畳み掛けるように全員がいっぺんに喋りだしたりするときもありますよね。僕も英語は聞き取れないのですが、字幕の情報だけだと、「端っこのあの人はなんて言っているんだろう」という疑問が生まれると思います。そういった部分が知れるというのが吹き替えの醍醐味のひとつだと思っています。

ーー本当にその通りですね。映画の中で、端っこの会話も大切な部分です。

宮野:端っこの会話に、作品のこだわりのやり取りなんだろうなと思うテンポ感だったり言葉遊びが入っていたりすることがあります。特に海外の作品は言葉遊びがすごく面白いです。いわゆる、アメリカンジョークってやつですね。それを日本語訳で表現するのは、結構難しいことだと思いますが、吹き替えでは、アメリカンジョークをジャパニーズジョークに寄せながらも、アメリカンジョークの良さを出すみたいな和訳の妙みたいなものが生まれるので、そういうところで面白さが出てくるのではないかと思っています。

ーージャパニーズ風に寄せるときって、日本語らしいトーンに声を変えるのですか?

宮野:声だけの印象でいうと、吹き替えでやるときの方が原音よりも大げさになるときもあるのかな…。例えば向こうの俳優さんが自分の心情をボソボソと小声で語るときでも、しっかり声を出したりすることもあります。その中で僕は毎回結構チャレンジしています。大げさになることもある一方で、向こうの俳優さんと同じトーンでやったりとか、アニメの口の大きさを真似してみたりとか……。吹き替えの可能性は大きいなと思っています。

ーー元の俳優さんの演技に寄り添う中で、宮野さんの吹き替えの演技のこだわりはありますか?

宮野:僕は声優のことを学校とかで習ったことがないので、こういう吹き替えをやってくださいとか、こういう風に合わせてくださいとかをお勉強したことがなく、現場で覚えていきました。なので、ディレクターのOKが出るお芝居を目指しています。僕の考えたアプローチでOKが出ることもあるので、そこのセッションが僕は楽しいですね。

ーー『スモールフット』ではどこが一番楽しかったですか?

宮野:僕が今回、原音に合わせたセリフで言うと、ミーゴと初めて会ったときにパーシーの声がカスカスになっちゃうシーンです。原音がめっちゃ面白くて、それ聞いたときに爆笑して、「なんでこんな言い方ができるんだろう」と思って絶対このニュアンスを僕も出したいと思いました。でも、家で練習しすぎて、声が枯れてしまいました(笑)。やりすぎには注意しなきゃいけませんね。

ーーこれから『スモールフット』のほか、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』『グリンチ』と“宮野真守吹き替え祭”が始まります。宮野さんの吹き替えへの思いを教えてください。

宮野:僕に限らずこのキャストで、「この作品の吹き替えをしています」ということが売りになればいいと思って、臨んでいます。僕らなりに作品をしっかりと華やかに彩って、僕らが生き生き演じることで、「吹き替えもいいじゃん!」と思っていただけるようなお芝居だったりアプローチを目指しています。特に『スモールフット』はハッピーな作品である反面、ちょっと考えさせられるところもありますし。でもそれを重く捉えるというよりも、歌に乗せてハッピーに紡いでいく物語なので、この秋はイエティのモフモフで温まってほしいと思います。ぜひ劇場でご覧ください!

(取材・文・写真=阿部桜子)

■公開情報
『スモールフット』
新宿ピカデリーほかにて公開中
監督:キャリー・カークパトリック
製作:ボニー・ラドフォード、グレン・フィカーラ、ジョン・レクア
製作総指揮:ニコラス・ストーラー、フィル・ロード、クリストファー・ミラー、ジャレッド・スターン、セルジオ・パブロス、キャリー・カークパトリック
キャスト:チャニング・テイタム、ゼンデイヤ、ジェームズ・コーデン、コモン、レブロン・ジェームズほか
吹き替えキャスト:木村昴(ミーゴ)、宮野真守(パーシー)、早見沙織(ミーチー)、立木文彦(ストーンキーパー)ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://smallfoot.jp

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<応募締切>
10月19日(金)

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