シリーズの魅力を再確認! 懐かしさも漂わせる『ザ・プレデター』の“B級”映画らしさ

松江哲明の『ザ・プレデター』評

 本作のラストシーンには賛否両論あるようですが、僕が思ったのはシェーン・ブラック監督をはじめとしたスタッフ・キャストたちが、「面白ければ何でもありだ!」という思いを優先して作った証のように感じました。だから、何が出ても驚かない(笑)。『プレデター』シリーズは、そんな思いつきのようなネタを伏線としてこれまで扱っているんですよね。『プレデター2』のラストに宇宙船が映って、その中にエイリアンの頭があったから『エイリアンVSプレデター』になるとか。そういうノリで作ってるこの感じが僕はすごい好きです。

 過去の名作を“リブート”することが多い昨今ですが、そのほとんどが元の作品を好きだった方が監督を務めています。オリジナル作を愛しているからこその“オマージュ”が随所に散りばめられていて、それはそれで楽しいんですが、どこかベタッとしているんです。『スター・ウォーズ』の新三部作、スピンオフなんかもまさにそう。オリジナルへの敬意なのか、愛なのかが強すぎて、描きたいものが何なのか分からなくなっている印象です。でも、本作のようにオリジナルを肌で知っている監督だと、元ネタをこれみよがしな引用ではなく、あくまでカラッと取り入れて作品に活かせるんですよね。その意味では、かつて活躍した監督・脚本家たちが、今の技術を使ってどんなことができるのか、どんどん挑戦してほしいし、そんな映画が観たいなと思います。

 と、いろいろ語ってきましたが、『プレデター』シリーズは敷居が高いものでもなければ、襟を正して観るような作品でもありません(笑)。『エイリアン』と戦ってしまったばっかりに、そしてこれだけ続いたシリーズものだけに、どこか『プレデター』も“レジェド”扱いされていますけど、『エイリアン』が映画史に刻まれ続ける傑作だとしたら、『プレデター』はあくまでB級映画だと思うんです。でも、そんなB級映画だからこそ、たどり着ける境地があるということを本作を通して知ってもらえたらうれしいですね。

(構成=石井達也)

■松江哲明
1977年、東京生まれの“ドキュメンタリー監督”。99年、日本映画学校卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が文化庁優秀映画賞などを受賞。その後、『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』など話題作を次々と発表。ミュージシャン前野健太を撮影した2作品『ライブテープ』『トーキョードリフター』や高次脳機能障害を負ったディジュリドゥ奏者、GOMAを描いたドキュメンタリー映画『フラッシュバックメモリーズ3D』も高い評価を得る。2015年にはテレビ東京系ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』、2017年には『山田孝之のカンヌ映画祭』の監督を山下敦弘とともに務める。最新作『このマンガがすごい!』がテレビ東京系にて10月5日より放送開始。

■公開情報
『ザ・プレデター』
全国公開中
監督・脚本:シェーン・ブラック
出演:ボイド・ホルブルック、トレヴァンテ・ローズ、オリヴィア・マン、トーマス・ジェーン、キーガン=マイケル・キー、ジェイコブ・トレンブレイ
配給:20世紀フォックス映画
(c)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
(c)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/the-predator/

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