前田敦子が女優として存在感を増している理由 アイドル出身演技派の筆頭格に

前田敦子、女優としての存在感

 そして出演最新作『食べる女』で演じるのは、同棲中の恋人に何か満たされなさを感じる、制作会社APのアラサー女性・白子多実子。前田自身の持つ可憐さはそのままに、セリフの端々に“満たされなさ”がにじみ出る。小泉今日子、鈴木京香、沢尻エリカら女優陣が演じる様々な事情を抱えた個性豊かな人々の中、この多実子もまたそういった1人であり、“女性”としての価値観について議論を交わし合うのである。もう前田にはアイドル(的な要素)の影も見られなくなっていることが印象深い。

 本作は群像劇とあって、前田の出番は必ずしも多いとは言えない。しかし、世代の違う女性の多様な生き方を描く本作で、彼女もまた女性の代表の1人を体現している。アイドル時代の学園モノなどへの起用のされ方とはまた違い、女性の代表を演じるということは、つまり女優として認められている証でもあるのではないだろうか。そんな前田といえば、結婚報道が大きな話題となったばかり。本作では、夫となった勝地涼との掛け合いも観ることができる。

 今後は、久しぶりの主演映画にして必ずや彼女の代表作となるであろう『旅のおわり世界のはじまり』が2019年公開予定。主演した中編作品『Seventh Code』(2014)や、『散歩する侵略者』(2017)などでタッグを組んできた黒沢清監督の最新作であり、国内外の注目も大きく集まっている。現役/元アイドルたちの映画・ドラマでの活躍が目覚ましい昨今、やはりその先頭に立つのは前田敦子だと言えそうだ。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『食べる女』
全国公開中
出演:小泉今日子、沢尻エリカ、前田敦子、広瀬アリス、山田優、壇蜜、シャーロット・ケイト・フォックス、鈴木京香、ユースケ・サンタマリア、池内博之、勝地涼、小池徹平、笠原秀幸、間宮祥太朗、遠藤史也、RYO(ORANGE RANGE)、PANTA(頭脳警察)、眞木蔵人
監督:生野慈朗
原作・脚本:筒井ともみ『食べる女 決定版』(新潮文庫・8月末刊行予定)
主題歌:「Kissing」Leola(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)
音楽:富貴晴美
PG12
(c)2018「食べる女」倶楽部
公式サイト:www.taberuonna.jp

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