傷口は鈴愛のところにまで クライマックスの『半分、青い。』は東日本大震災をどう描く?

『半分、青い。』が描く震災

 鈴愛は「母親として失格や」と自責の念にとらわれる。自分の娘のことを守ってあげられなかった辛さを律に打ち明ける。ただ、そんな鈴愛に対して律は、「1人で頑張り過ぎんな」と声をかけた。こういう時に律の口から発せられる言葉は、いつも温かい。頑張りすぎるきらいがある鈴愛のことを理解している律の気遣いは、いくつになっても変わらない。

 裕子の安否を心配する鈴愛。そんな鈴愛を気遣う花野。そんな風に花野に心配をかけたことで落ち込む鈴愛を思いやる律。皆それぞれ、誰かに対して気を配り、思いを寄せる。もちろん、実際の震災では心配どころの騒ぎではなく、大切な存在を本当に失ってしまった人たちがいる。だからこそ、震災を安易に語ることはできないと思う。

 ただ、少なくとも言えるのは、大震災が起きたときには、裕子を気にする鈴愛のような、安否を知りたくてもどうすることもできない人々が全国で溢れかえっていたということだ。そして、そんな鈴愛のような人々の周りにはまた、その姿を気にかける人々もいる。天災に抗うことは決してできず、被災地のみならず各所にその被害は広がっていく。しかし、その大きくなる傷口を癒やすことが唯一できるのは、他人を支える力を持つ人間ではないだろうか。

 ボクテ(志尊淳)によれば、裕子の勤める仙台の病院から続く道は瓦礫で遮断されており、どこかの避難所にいる可能性もあるとのこと。裕子がいる東北の町はまさしく、2013年放送の『あまちゃん』(NHK総合)で映されたような、変わり果てた姿になっているのであろう。

 震災という要素が本作の最終週でどのような形で関わってくるのか。そしてその他にも、鈴愛と涼次(あるいは、鈴愛と律)の関係、そよ風の扇風機の今後など、最終週とはいえ、まだまだ見逃せない結末が目白押しである。どうやら、残りの数話もめくるめく展開のオンパレードとなりそうだ。

(文=國重駿平)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/奈緒、矢本悠馬、石橋静河、余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊、上村海成/清野菜名、志尊淳、山崎莉里那、小西真奈美
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる