加藤シゲアキ、“表情のない”演技がなぜハマった? 『ゼロ 一獲千金ゲーム』で見せたひたむきさ

 加藤の表情は決して豊かなわけではない。義賊仲間との対話で見せる力の抜けた笑顔と、謎解きの中で見せる険しい表情ばかり印象に残っている。原作の台詞を活かした演出には、どうしても説明台詞になってしまう場面もあった。しかし、加藤が見せる強い目力やハキハキとした台詞回しには、仲間を守ろうとする零の正義感の強さが感じられた。加藤の演技に嫌味が感じられないのは、「零ならこの時、どうやって相手に語りかけるだろう」と、加藤が“宇海零”という青年と真摯に向き合ってきたからではないだろうか。

 零の演技には、加藤自身のひたむきさを感じることができる。アイドルグループの活動だけでなく、役者や小説家など、クリエイティブな肩書をいくつも持つ加藤だが、現在の加藤の姿にいたるまでにはたくさんの苦悩があったようだ。

 2016年8月に放送された日本テレビ系の番組『チカラウタ』に出演した際には、「NEWSとしてデビューした当時の自分は『補欠扱い』だった」と話している。誰でもできる仕事に立候補しても、仕事が与えられることが少なく、周りから見た自分と自身が思う自分との差に苦しむようになったようだ。しかし、嵐の二宮和也が自らオーディションに参加していることを知り、自発的に行動することを決意。「書くことだったらジャニーズの誰よりもやって来たかもしれない」と処女作『ピンクとグレー』を書き上げたのだ(参考:モデルプレス|NEWS加藤シゲアキが涙 関ジャニ∞錦戸亮への複雑な心境吐露「好きだけど嫌い」「でも、すごい嬉しかった」)。そんな過去があるからこそ、彼のひたむきな姿勢には嫌味がない。人気コミックが原作のドラマ主演には並大抵ではないプレッシャーがあったと思うが、加藤はそれをはねのけ、あくまでもドラマ版の“宇海零”を最後まで丁寧に演じきった。

 8月23日に更新されたNEWSの連載「NEWS RINGS」(ジャニーズ公式携帯サイト・Johnny’s webより)によると、『ゼロ 一獲千金ゲーム』の撮影の空き時間に執筆活動を行っていたことが明かされている。加藤の次回ドラマ出演は未定だが、自身の役割に向き合い続ける真摯な姿を今後の作品でも見届けていきたい。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

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