初登場6位『響 -HIBIKI-』 注目すべきなのは、主演の平手友梨奈だけじゃない

『響』注目すべきは平手友梨奈だけじゃない

 もう一つの側面は、2005年に発足した東京芸術大学大学院の映像研究科(映画専攻)の卒業生であること。北野武、黒沢清、坂元裕二らが教授を務めてきたことでも知られる同科は、近年になって濱口竜介(『寝ても覚めても』)、真利子哲也(『ディストラクション・ベイビーズ』)といった優れた若手監督を輩出してきたことで注目されている。月川翔監督は朝日新聞(2018年9月18日)の取材で、同窓の濱口竜介監督の2008年の作品『PASSION』に打ちのめされて、「『僕が映画を作る必要はない』と思いました。大学の恩師に『同じ土俵で勝負しなければいい』と言われ、エンターテインメントを作ろうと決めた」という興味深いエピソードを披露している。

 ただ、同じエンターテインメント作品といっても、『君の膵臓をたべたい』と『となりの怪物くん』と『センセイ君主』と今回の『響 -HIBIKI-』では、そのテイストは大きく異なっている。『君の膵臓をたべたい』と『響 -HIBIKI-』はシリアス路線、『となりの怪物くん』と『センセイ君主』はコメディ路線と無理やり分けることは可能だが、いずれの路線においても作品を追うごとに演出の洗練度は高まっていて、それでいて敢えてベタな描写を避けたりはしないその腹を括った姿勢は、監督の作家性として確立しつつあると言っていいだろう。もしかしたら、日本のエンターテインメント作品のジャンルをはみ出すことなく、そこで驚くような名作を近いうちに生み出すかもしれない。そんな予感に満ちているのだ。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■公開情報
『響 -HIBIKI-』
全国東宝系にて公開中
出演:平手友梨奈、北川景子、アヤカ・ウィルソン、高嶋政伸、柳楽優弥、野間口徹、板垣瑞生、小栗旬、北村有起哉、吉田栄作
原作:柳本光晴『響~小説家になる方法~』(小学館『ビッグコミックスペリオール』連載)
監督:月川翔
脚本:西田征史
配給:東宝
(c)2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 (c)柳本光晴/小学館
公式サイト:http://hibiki-the-movie.jp/

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