菅田将暉×山田孝之が築き上げた濃密な物語 『dele』は“死”ではなく“生”を描いたドラマに

『dele』死ではなく生を描いたドラマに

 そんな祐太郎の悲しみに共有したのが山田演じる圭司だ。第1話では、祐太郎をつっぱねるような態度をとり、人との関わりを極力持たないように生きてきた様子を見せた圭司。しかし「人をほんの少し優しくする」男・祐太郎との出会いが、彼の考え方を変えていった。深い悲しみに覆われた祐太郎に共鳴する圭司の目には、第1話では見せなかった優しさに満ちている。

 圭司は、真相を解き明かすのに役立つのではと、妹の死に関わる大物政治家・仲村毅(麿赤兒)と自分の父の黒い過去を祐太郎に手渡す。祐太郎のために、自分の父の犯した過ちを手渡したのだ。祐太郎は「自分のように過去に囚われ、自分の家族を憎むようになってほしくない」と泣きながら拒絶するが、そんな彼の顔を見つめる圭司の表情は優しかった。

 山田は感情を表に出さない圭司のキャラクター像を壊すことなく、最終話までの間に圭司に生じた変化を丁寧に演じている。今まで相手の顔を見ることなく言葉を発していたぶっきらぼうな圭司が、祐太郎の心の傷に共鳴し、彼を諭すように言葉を選びながら話す姿は印象的だ。

 人の死後、遺されたデータを削除する仕事を請け負う圭司と、もし同じような仕事をするのなら、死後遺したいデータを守り抜きたいと考える祐太郎。彼らの考え方や性格は正反対だが、大切な人の死後、抱え続けてきた心の傷には共通点がある。デジタル遺品を通して、亡くなった人や今を生きる人の人生に触れてきたからこそ、彼らは互いに共鳴することができた。ドラマ終盤、仲村の裏の顔を暴いた彼らに、背負い続けてきた傷の重さは感じられない。

 『dele』は「デジタル遺品」という題材で物語を描いてきた。しかし今作で強く表現されていたのは、“死”ではなくむしろ“生”のほうだったと気づかされる。1話完結のバディものとして視聴者に受け入れやすい演出でありながら、重厚な物語を丁寧に描いてきた今作。山田と菅田は、人の死後に残る“記録”と“記憶”に向き合う圭司と祐太郎を真摯に演じたことで、残された人々の生きる道を示した。濃密な物語が終わってしまうのは心惜しいが、削除しない限り残り続ける「デジタル遺品」のように、観た人の心に残り続けるドラマと言えよう。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
金曜ナイトドラマ『dele(ディーリー)』
出演:山田孝之、菅田将暉、麻生久美子
原案・パイロット脚本:本多孝好
脚本:本多孝好、金城一紀、瀧本智行、青島武、渡辺雄介、徳永富彦
音楽: 岩崎太整、DJ MITSU THE BEATS
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)
監督:常廣丈太(テレビ朝日)、瀧本智行
撮影:今村圭佑、榊原直記
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://dele.life/

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