この先いつまで腐り続けるんだ? 『ハゲタカ』最終回、綾野剛が遺した“今の日本へのメッセージ”

『ハゲタカ』綾野剛が遺したメッセージ

 同席した芝野(渡部篤郎)は、再生担当執行役員という立場で、子会社からの詳細な聞き取りを、貴子は会議のハンドリングやマスコミの手配を行っていた。『ハゲタカ』は、腐った日本を変えていくという鷲津の不屈の精神が、形は違えど、芝野、そして貴子へと受け継がれていった作品である。その鷲津の意志は、彼を“ボス”と呼ぶサムライファンドのメンバーや、一度は離れたもののアメリカの投資ファンド代表として再び現れるアラン(池内博之)にもきっと伝わっている。

 20年来の因縁の相手、飯島(小林薫)との“最後のお別れ”では、「風通しが良くなれば未来も変わる。私とあなたがいなくなってもこの国は生きていく」と鷲津。「わしはまだ生きてる。わしは必ず復活する。その時にな、お前に地獄見したる。それまで首よう洗うて待っとれ」という飯島とのやりとりからは、終わることのない2人の戦いを予感させる。

 第7話より登場した天宮(森崎ウィン)の会社スペース・フロンティア・ジャパンに、鷲津はビジネス相手としての取引の話を持ちかける。投資の話は断り、「自力で飛ぶ覚悟を持て」と一周していた鷲津が天宮に提示したのは、自らが提唱していた“壊して羽ばたく”「Scrap & Bird」。瓦礫の山となった帝都重工から絶対に羽ばたくという天宮の宣言にもまた、鷲津のスピリットが重なる。

 1997年より20年以上もの間、強く惹かれ合い、時に運命が交錯してきた鷲津と貴子。2人でイヌワシを見た始まりの場所で、貴子は“大事な人”である鷲津に会うことを持ちかけるが、彼はその場には現れない。その頃、鷲津は日本を出て、海外へと出国しようとしていた。2人が同じ青空を見上げる描写からは、ビジネスパートナーを超えた仲であったことを想像させる。

 最終章は、2018年平成最後の夏が舞台であったが、アジア重工連会議の日付は最終回の放送日と同日であった。次々と大企業による不祥事が発覚する現代において、『ハゲタカ』は実際に起こり得るノンフィクションの物語でもある。「平成が終わろうとしている今になっても、大企業は何一つ変わっていなかったようだ」「日本はこの先いつまで腐り続けるんだ?」。芝野や鷲津が言い放ったセリフは、今の日本に向けたメッセージのように思えてならない。では!

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■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『ハゲタカ』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00〜放送
原作:真山仁『ハゲタカ』『ハゲタカII』(講談社文庫)
出演:綾野剛、渡部篤郎、沢尻エリカ、池内博之、木南晴夏、堀内敬子、佐倉絵麻、杉本哲太、光石研、小林薫
脚本:古家和尚
監督:和泉聖治
音楽:富貴晴美
主題歌:Mr.Children「SINGLES」(Toy’s Factory)
ゼネラルプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)、下山潤(ジャンゴフィルム)
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://www.tv-asahi.co.jp/hagetaka/

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