日本映画界が患うリメイク病? 同じ原作の実写/アニメや韓国作品リメイクが生まれる理由

日本映画界でリメイクが生まれる理由

 『君の膵臓をたべたい』は厳密に言えばリメイクではなく「同じ原作を持つ作品」であるが、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は2012年に日本でも公開されてヒットを記録した韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のリメイク作。こちらは日本公開を基準にしても6年のインターバルがあるので「短すぎる」という指摘は当たらないし、公開規模が大きく違うことからも明白なように、マーケットは日本国内限定ではあるものの(そこが英語圏の国による外国語映画のリメイクとは大きく意味が違うところだ)より幅広い層をターゲットにした作品となっている。したがって、リメイク元への思い入れが強い観客の「こんなの『サニー』じゃない」という声も、最初から織り込み済みではあったはずだ。

 この「韓国の作品を日本でリメイクする」という動き、映画でもドラマでもこれまで成功例がそこまで多くないにもかかわらず(現在放送中のドラマ『グッド・ドクター』(フジテレビ系)は一定の結果を出しているが)、今後も続きそうな気配がある。その理由は、単純に韓国のエンターテインメント界が優れた作品を数多く送り出しているということ、そしてハリウッド作品などと比べればリメイク化の権利がはるかに安上がりという以外に、日本国内に映像化をしてヒットしそうな原作がマンガでも小説でも枯渇しつつあるという状況がある。つまり、作品の成り立ちはまったく違うものの、アニメ版『君の膵臓をたべたい』も『SUNNY 強い気持ち・強い愛』も、企画の段階では同じ「原作不足」という問題を有していたとも言える。

 日本の映画業界やテレビ業界において「原作のない作品にはなかなかお金が集まらない」「原作のない作品の企画はなかなか会議を通らない」という話は、それこそ10年以上前からいたるところで耳にしてきた話だ。その結果、ヒット・ポテンシャルのある原作を散々食い尽くして、企画のネタがいよいよ「1、2年前にヒットした作品と同じ原作」や「日本以外のアジアの映画やドラマ」に向かうようになってきていると言われれば、今回のアニメ版『君の膵臓をたべたい』や『SUNNY 強い気持ち・強い愛』以外にも、いくつか作品の思い浮かぶ人は多いだろう。日本の映像界において長らく続いてきた「原作偏重」「原作依存」によって、オリジナル作品を書ける(=オリジナル作品を書くことで生活ができている)新しい書き手があまり育っていないというその背景に思い至った時、この問題の深刻さはより鮮明に浮き上がってくる。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■公開情報
『SUNNY 強い気持ち・強い愛』
全国東宝系にて公開中
出演:篠原涼子、広瀬すず、小池栄子、ともさかりえ、渡辺直美、池田エライザ、山本舞香、野田美桜、田辺桃子、富田望生、三浦春馬、リリー・フランキー、板谷由夏
原作:『Sunny』CJ E&M CORPORATION
監督・脚本:大根仁
音楽:小室哲哉
(c)2018「SUNNY」製作委員会
公式サイト:http://sunny-movie.jp/

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