松重豊、『検察側の罪人』の骨幹部分を支える役割に 光る名演は長い“演劇人生”が活きている?

松重豊、“ダーティーキャラ”の渋み

 キャリアの初期に、故・蜷川幸雄が主催していた劇団「蜷川スタジオ」に所属していた経験を持つ松重は、『トランス』をはじめとする鴻上尚史演出作品などへの出演を多く重ねてきた。もはやテレビで見かけない日はないほどの活躍を見せている現在でも、倉持裕や鄭義信、さらには藤田貴大といった気鋭の演出家の作品など、舞台作品へもコンスタントに参加している。ほかの共演者より頭一つぶん以上大きな身体は舞台に映え、独特の声色で奏でられるセリフの数々は、劇場で体感するにかぎるだろう。

『孤独のグルメ Season7』(c)テレビ東京

 さらに松重といえば、本人の初主演ドラマとして2012年より放送開始され、現在Season7までシリーズ化されている『孤独のグルメ』(テレビ東京系)も好評だ。聞き心地の良い柔らかな声音でのモノローグと、次から次へと逸品を幸せそうに頬張る姿。もちろん“演じている”はずではあるが、実在する名店の中に自然と溶け込む彼の人間味は、テレビ画面越しに滲んでくるようでもある。この一連のシリーズを追っていく過程で彼のファンになったという方も多いのではないだろうか。フィクション性の高い作品のときとはまた違った松重の姿を楽しめるのだ。

 その存在感と多彩な演技で魅せる“名バイプレイヤー”の松重豊。出演最新作の『検察側の罪人』で、この円熟した渋みと凄みを体感しに、ぜひとも劇場に足を運んでいただきたいものである。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『検察側の罪人』
全国東宝系にて公開中
監督・脚本:原田眞人
原作:『検察側の罪人』雫井脩介(文春文庫刊)
出演:木村拓哉、二宮和也、吉高由里子、平岳大、大倉孝二、八嶋智人、音尾琢真、大場泰正、谷田歩、酒向芳、矢島健一、キムラ緑子、芦名星、山崎紘菜、松重豊、山崎努
製作・配給:東宝
(c)2018 TOHO/JStorm
公式サイト:kensatsugawa-movie.jp

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