大嘘が現実を変えたーー『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督&市橋浩治Pが語る“映画が持つ力”

『カメ止め』上田監督&市橋Pインタビュー

ーーツイートといえば、キャストや監督、スタッフ一丸となって感想を積極的にいいねやリツイートをしていましたよね。それも拡大の要因かなと思っています。

上田:みんな寝不足になるぐらい、エゴサーチしてました(笑)。

市橋:最初の方は本当に喜んで返していたんです。いまや、それが追いつかなくなっちゃって(笑)

上田:1週目とかは多分全部見てたと思います。

市橋:全員が全部見ていいねを押していましたね。

上田:かつては「これ見た?」なんて発見したツイートを報告し合えるくらいだったんですが、もうどこかの段階から全く追いきれなくなりました。

ーー本作の拡大公開にあたって、配給会社のアスミック・エースが途中から加わりましたが、それが決まったのは?

市橋:1週目にアスミック・エースの方が観てくださり、2週目に相談をいただいて、2週目の終わりくらいには拡大の話が決まりました。ただその時には劇場の夏休み編成がほぼ決まってたので、8月のお盆過ぎくらいから徐々に公開していく計画だったんです。でも、世間の熱狂ぶりとかお客さんの入り具合、あとイオンシネマ大宮や川崎チネチッタというシネコンでの動員成績がよかったこともあり、劇場さん側も前のめりになってくださいました。当初予定していた拡大公開がガッと繰り上がって、8月3日スタートになったんです。

ーーTOHOシネマズなどでの公開が決まった後は、市橋さんは具体的にどんな動きを?

市橋:色んな準備作業を図ったという感じですかね。メディアの取材対応は基本的に上田くんにやってもらっていたので、それこそ物販とかパンフレットをどうすんねんと……(笑)。今まで2館で売っていたものが150館で売るとなったら、「そりゃ無理だろ〜」と思いましたね。

ーー拡大するにあたり大変な仕事もあったと思いますが、自分の作品が大きなスクリーンで流れるのは最高ですよね。

上田:なんか本当にまだそれは言葉にできないです。ずっとふわふわしながら、「本当なのかな、いや本当だよな」と思いながら観ていました。実感できるのは多分、もうちょっと後になった頃じゃないかな。驚くようなニュースが毎日1時間おきに飛び込んでくる状態で、びっくりしているうちに1日が終わっていくんです。感慨にふける時間はないですね。

ーーちなみに上田監督と市橋さんが組んだきっかけは何だったんですか?

市橋:テアトル新宿でかかっていたオムニバス映画『4/猫(ねこぶんのよん)』の4人の監督のうちの1人が上田くんだったりと、以前から僕が一方的に上田くんの映画を観ていたんです。でも、コミュニケーションは取ったことがなくて。それから、シネマプロジェクト第7弾の企画が始まったのですが、2人の監督のうちもう1人が決まらなかったんです。で、すでに決まっていた岡元雄作監督が「上田くんどう?」と言ってきて、「上田くんだったら良いんじゃない」ということで一緒に仕事をすることが決まりました。

ーー劇中でのプロデューサーは、強烈なキャラクターでしたが、市橋さんもあんな感じだったり?(笑)

市橋:あれは、僕じゃないですよ! 僕もっと何もしないですからね(笑)。僕は、映画プロデューサーというよりも俳優や監督を養成するENBUゼミナールの代表なので、卒業生を含めた若い人たちが世に出るきっかけ、場を作るプロデュースの方が強いんです。シネマプロジェクトもそういう意味合いが強くて、若い監督さんと若い俳優さんがワークショップを通して映画を作る。そして最後に上映して、色んな人に観てもらえれば、彼らが活躍できるきっかけになるかなという思いでやってきました。メインは場作りのプロデュースなので、ぶっちゃけていうと映画自体のプロデュースは、そんなにないんですよね。

ーーそれでは2人で話し合って決めたことはあまりなかったと。

上田:僕がずっと自主映画を作っていたので、中身のことは全部任せてもらえました。一個だけあるとすると、火炎放射をぶっ放すっていうシーンを書いた時に、「火炎放射はやめて」とストップがかかりましたね(笑)。マイクブームで押すことになりました。

市橋:危ないし、怪我するからね。スプレー缶みたいなので火炎放射器をやろうとしたんですよ(笑)

上田:虫除けスプレーをシューッとしてライターで燃やして……(笑)

市橋:もしかしたら爆発するかも知れないから、「それはやめとこ」という話にはなりましたね。撮影日数とか予算に関わってくるので、そこは言ったりもしましたけど、あとは本当に監督にお任せでした。

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