『検察側の罪人』初登場1位 映画は「スターの時代」から「アンサンブルの時代」へ

映画は「アンサンブルの時代」へ

 「スターの時代」から「アンサンブルの時代」へ。『花より男子F』(2008年6月公開。興収77.5億円)、『ROOKIES -卒業-』(2009年5月公開。興収85.5億円)の大ヒットを思い返せば、そのような変化が今に始まったわけではないことがわかるが、とかくその活動方針の独自性が語られがちなジャニーズ事務所のタレントや役者でさえも、むしろ率先してそうした時代の動きにアジェストしてきたということだろう。『検察側の罪人』における木村拓哉と二宮和也の共演も、そのような文脈で見てみると、新しい視点が得られるのではないだろうか。

 海外に目を向けるなら、『オーシャンズ』シリーズのような明確にスター役者たちの共演を主題に掲げた作品はもちろんのこと、単独ヒーロー作品のヒットで出塁を積み重ねた後に複数ヒーローが活躍するアンサンブル作品で特大ホームランを狙うアメコミ映画の構造や、ホラーやサスペンスのジャンルにさえ導入され始めているユニバース(過去の作品とのクロスオーバー)の方法論も、「アンサンブルの時代」を象徴していると言えるだろう。一方で、『ミッション:インポッシブル』シリーズなどを筆頭に、何十年もの間ずっと映画スターとして作品の看板を背負い続けているトム・クルーズのような偉大な存在もいるわけだが。当たり前だが、誰もがトム・クルーズのようになれるわけではない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■公開情報
『検察側の罪人』
全国東宝系にて公開中
監督・脚本:原田眞人
原作:『検察側の罪人』雫井脩介(文春文庫刊)
出演:木村拓哉、二宮和也、吉高由里子、平岳大、大倉孝二、八嶋智人、音尾琢真、大場泰正、谷田歩、酒向芳、矢島健一、キムラ緑子、芦名星、山崎紘菜、松重豊、山崎努
製作・配給:東宝
(c)2018 TOHO/JStorm
公式サイト:http://kensatsugawa-movie.jp

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