『検察側の罪人』初登場1位 映画は「スターの時代」から「アンサンブルの時代」へ

映画は「アンサンブルの時代」へ

 先週末の映画動員ランキングは、『検察側の罪人』が土日2日間で動員31万8000人、興収4億1600万円をあげて初登場1位に。この数字は、木村拓哉の映画出演作としては前作にあたる『無限の住人』(2017年4月公開)の初動と比べるとダブルスコア以上の220%の成績。二宮和也の映画出演作としては前作にあたる『ラストレシピ 〜麒麟の舌の記憶〜』の初動と比べるとトリプルスコア以上の301%の成績。金曜日の初日からの3日間累計では動員44万7000人、興収5億8000万円と、夏休み最後の週末のトップに相応しい堂々たる数字を叩き出した。

 本サイトのレビュー(木村拓哉と二宮和也、アプローチの異なる名演! 『検察側の罪人』が必見作である理由)にも書いたように、筆者は『検察側の罪人』を今年の実写日本映画の中でも屈指の作品であると高く評価する立場だが、そうした作品の見事な仕上がりや高い志が必ずしも興行にそのまま反映されるわけではないことも承知している。そういう意味では、近年、作品の商業的価値を背負う看板スターとして少々陰りが見えていた木村拓哉と二宮和也にとって、『検察側の罪人』という作品との出会いは、役者としてのキャリアにおいて大きな価値のあるものだっただけでなく、映画スターとしての価値を維持する上でも大きな成果をもたらしたと言っていい。

 『検察側の罪人』の宣伝において強調されてきたのは、同じジャニーズ事務所の先輩と後輩でありながら、これまでテレビドラマも含めてフィクション作品では共演のなかった木村拓哉と二宮和也の共演というトピックだった。実際、作中での二人の共演は観客にとってワクワクするものであったが、あくまでも作品中心主義的見地からするなら、それは「同じ事務所の先輩後輩がどうこう」という文脈で消費されるようなものではなく、純粋に「個性と華のあるスター役者同士の共演」として価値のあるものだったとするべきだろう。

 偶然か必然か、1位の『検察側の罪人』だけでなく、先週末の動員ランキングのトップ3作品(今夏の実写日本映画のトップ3もこれらの作品になるだろう)にはいずれもジャニーズ事務所のタレント、役者が出演している。2位の『銀魂2 掟は破るためにこそある』では前作に引き続きサプライズ的なバイプレイヤーとして堂本剛が出演、3位の『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』ではドラマシリーズから引き続きリードロールで山下智久が出演。『銀魂』シリーズが大勢のスター役者たちのアンサンブルによって人気シリーズとなったのはご存知の通りだが、『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』も山下智久が一人で作品を背負っているようなタイプの作品ではなく、他の役者たちが演じるキャラクターの関係性(そこには山下智久演じる藍沢耕作が絡まない関係性も多くある)が物語の見せ場となっている。

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