『銀魂2』、前作超えを狙える好発進 映画は続編を作るためにこそある!?

映画は続編を作るためにこそある!?

 というのも、自社配給した2006年の『デスノート』の大ヒットがきっかけとなったワーナー・ブラザース ジャパンの実写日本映画への注力は、『るろうに剣心』という大ヒット・シリーズを生み出すに至ったが、同シリーズ最終作となった2014年9月公開の『るろうに剣心 伝説の最期編』を最後に、『銀魂』を唯一の例外として、シリーズ化するに足るだけの結果をまったく残していなかったからだ。2016年4月公開の『テラフォーマーズ』(興収7.8億円)、2017年8月公開の『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(東宝と共同製作・配給。興収9.2億円)、2017年12月公開の『鋼の錬金術師』(興収約11億円)、2018年7月公開の『BLEACH』(興収見込み約8億円)と、非少女コミック原作実写化作品に限ってもまさに死屍累々といった状況。タイトルに「第一章」とある『ジョジョの奇妙な冒険』は言うまでもないが、エンドクレジット後に続編を示唆するシーンが挿入されていた『鋼の錬金術師』、劇中では「死神代行篇」とシリーズ前提のタイトルを掲げていた『BLEACH』など、宣伝戦略的に製作サイドが続編を否定したことはあったとしても(『銀魂』も当初は最初で最後の実写化という触れ込みだった)、それらの作品が続編を想定していたのは明白だ。

 21世紀に入ってから世界中の映画マーケットを席巻してきたスーパーヒーロー作品も、言い方を換えれば「コミック原作実写化作品」(原作との参照点は作品によって千差万別で、キャラクター原案に近い作品も多いが)。特にワーナー・ブラザース本社にとって、DCのシリーズ作品は映画事業の屋台骨をずっと支えてきた。そんなワーナー・ブラザース本社からしてみれば、「日本でもコミック原作のシリーズものを」と考えたのは自然の流れだろう。とかくコミック原作実写化というと日本の映画界特有の流行のように語られがちだが、むしろ日本は自国に人気のコミック原作が豊富にありながらそれを活かしきれてこなかった、とする方が正確だ。そんな中で、ワーナー・ブラザース ジャパンに限らず日本映画界全体を見渡しても数少ない「シリーズ化の成功例」となりそうな『銀魂』。当然、水面下では3作目に向けて動いているはず。そこに障壁があるとしたら、同じ出演者を確保できるかどうかだろう。役者のギャランティーの桁が2つくらい違って、シリーズ作品の成功例が積み重ねられていない現状では仕方がないことではあるが、今後はハリウッドのように役者とのシリーズ複数本契約のような動きも出てくるかもしれない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■公開情報
『銀魂2 掟は破るためにこそある』
全国公開中
出演:小栗旬、菅田将暉、橋本環奈、柳楽優弥、三浦春馬、窪田正孝、吉沢亮、勝地涼、夏菜、戸塚純貴、長澤まさみ、岡田将生、ムロツヨシ、キムラ緑子、佐藤二朗、堤真一、中村勘九郎、堂本剛
脚本・監督:福田雄一
原作:『銀魂』空知英秋(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
制作:映画「銀魂2」製作委員会
制作プロダクション:プラスディー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)空知英秋/集英社 (c)2018映画「銀魂2」製作委員会
公式サイト:gintama-film.com

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