綾瀬はるか×上白石萌歌の土下座が美しい 『義母と娘のブルース』に見る親子の姿

『ぎぼむす』綾瀬×上白石の土下座が美しい

 しかし、本当にその壁を乗り越えたいと思ったときには「なぜ、うまくいかないのか」よりも、「どうやって、うまくいかせるか」を考えることが建設的だ。娘の心の叫びを前にしたときには、言葉を失っていた亜希子だが、すぐに「やめる」と言い出す『ベーカリー麦田』の店長・章(佐藤健)に対しては、明快に諭していた。「お言葉ですが、店長が輝けないのは才能の問題や、場所の問題でもないと思います。“だから、やめる”が、最大の要因かと」と。

 章は、きっとみゆきが辿ったかもしれない未来の姿だ。どうしてもこれがやりたいという確固たるものが見つからず、目の前には超えられない親の背中があり、周りの誰よりも自分と親とを比べて劣っていると感じてしまう。きっと章もみゆきも、自分が“したい”よりも、人を“喜ばせたい”で動くタイプの人なのだろう。亜希子や章の父のように道を切り拓く人がいるなら、その道をより強く舗装する人や、見る人をホッとさせる街路樹を植える人も必要だ。だが、ことキャリアの話になると「自分のやりたいことは何だ」と問われることが多くなる。

 子育てとマネジメントは、よく似ている。目指すべき背中があるうちは、懸命に追いかける。だが、大事なのはその先の自分の良さを活かす方法だ。亜希子が提案する「麦田店長に関する今後の展開案」には、飽きっぽく、めんどくさがりで、敬語が使えずに名前をよく間違えるなど、社会人として弱点と言われる部分も見つめながら「これはやみくもに否定をせず、フレンドリーなキャラクターの名物店長に」と、個性を活かす方法を模索する。同時に「彼の作るパンの特徴として、味は改善の余地を残すがそのフォルムが美しいことは特記に値する」と、強みも見逃さない。優秀な親や上司、あるいは周囲と比べて劣っているのではなく、異なる魅力と個性があるということ。小さな奇跡で見つけた、もうひとりの“宮本みゆき”を見るように。

 それにしても「夜の営み」をWワークと勘違いした亜希子と、「ヒニン」と「ヒナン」を聞き間違えるみゆきは、よく似てきた。亜希子のようにみゆきが壁に頭をぶつけて猛省し、みゆきのように亜希子が屈託なく笑う。血がつながっていてもいなくても、親と子にはなれる。そして違っているからこそ、親と子はお互いに学び合えるのだ。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『義母と娘のブルース』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜23:07放送
出演:綾瀬はるか、竹野内豊、佐藤健、横溝菜帆、川村陽介、橋本真実、真凛、奥山佳恵、浅利陽介、浅野和之、麻生祐未
原作:『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)桜沢鈴
脚本:森下佳子
プロデュース:飯田和孝、大形美佑葵
演出:平川雄一朗、中前勇児
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/

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