上野樹里、物語に深みを与える演技が評判に 『グッド・ドクター』受けの芝居が生み出す共感性

上野樹里、受けの芝居が生み出す共感性

 これまでは、自身から行動を起こすキャラクターでの芝居のうまさを見せてきた上野だが、本作では受けの演技で物語に深みを与えている。山崎の役柄は、個性的であるが故に、受ける相手の芝居によっては、やや現実感のない印象を与えてしまう危険性がある。もちろん、山崎の繊細な演技は、大いに賞賛に値するが、上野の受けの芝居が絶妙に強い個性を吸収しているからこそ、観ている側により感情が乗ってくるのだ。

 一方、基本的に受けの芝居で本作を盛り上げるなか、7月26日に放送された第3話では、どこの病院でも受け入れを拒否された絞扼性イレウスを発症している6歳の女の子を救おうと、手術経験のない夏美が、自身の思いに従って、リスクに挑む緊張感あふれる場面を演じた。この回の夏美は、能動的に行動を起こし、正義感あふれる医師の顔、過酷の現実に直面し打ちひしがれる無力な顔、そしてどんなことがあっても希望を捨てない力強い顔……をセリフと目線、佇まい、表情で表現した。

 これまでの作品でも、役に対する理解度を深めるため、徹底的にキャラクターに向き合ってきた上野。本作でも「夏美だけではなく、新堂先生のキャラクターまでも深く理解してくれているので心強い」と山崎は完成披露試写会で語っていた。実際、ドラマ関係者によると、クランクイン前に役作りのため、都内病院はもちろん、小児専門病院である長野県立こども病院にも出向いたという。

 本作の登場人物のなかで、視聴者の感情にもっとも近い部分を担っているのが、夏美の立ち位置であり、その意味では非常に難易度が高い役でもある。ドラマは中盤に差し掛かったが、毎話放送後「泣けた」という感想が多い。もちろん山崎の天使のように純粋な演技が人々の心をつかんでいることは間違いないが、しっかりと新堂先生の思いを、視聴者に橋渡ししている上野の功績も大きいだろう。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■放送情報
『グッド・ドクター』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00放送
出演:山崎賢人、上野樹里、藤木直人、戸次重幸、中村ゆり、浜野謙太、板尾創路、柄本明ほか
原作:『グッド・ドクター』(c)KBS(脚本:パク・ジェボム)
脚本:徳永友一、大北はるか
プロデュース: 藤野良太、金城綾香
協力プロデュース:西坂瑞城
演出: 金井紘、相沢秀幸
制作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/gooddoctor/

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