『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』は、まごうことなき“おじさん映画”の傑作だ!

『M:I 6』は“おじさん映画”の傑作!

 ところが、トムクルさんは負けなかった。本作のトムクルさんはやっぱり圧倒的にカッコいい。それはなぜか? 逆説的だが、本作のトムクルさんはカッコ悪いからこそカッコいいのだ。この姿勢と戦略によって、トムクルさんはカヴィルに食われず、なおかつカヴィルを下げることなく、自身のカッコよさを維持する離れ業を成立させている。若手と張り合いつつ、同時に若手を立てているのだ(カヴィルはカヴィルでちゃんとカッコいいのだ!)。この点が本作を傑作の領域まで高めていると言えるだろう。この構図が端的に分かるのが、中盤の見せ場であるロンドンの追跡シーンだ。文字通り立っているだけで画になるカヴィルは、スマートかつエレガントに普通のペースで歩く。一方、トムクルさんは全力疾走だ。道なき道を走り、跳び、ギャグまで挟み、ボロボロになりながらカヴィルを追いかける。この追跡劇の途中で足も折る。その様が何よりもトム・クルーズという人物の凄みを語っている。そして新旧美形頂上決戦のトドメの一撃は、最後の最後にやってくる。全てが終わって傷だらけのトムクルさん。そのトムクルさんが浮かべる“あの”必殺スマイル。誰もが知っている、水戸黄門の印籠の如き無敵のスマイルだ。笑顔一つで映画を締められる。それはまさに完璧なるハンサム仕草である。世界で一番ハンサムな56歳であり、逆に56歳でもここまでハンサムたれるのだ。

 人は加齢とともに、色々なものを諦める。カッコよくあることだって、諦めの対象だろう。しかし、本作を観ればそんな諦めた心が再び踊りだすはずだ。「56であれだけやってる奴がいるんだ。だったら俺だって、せめて……!」そう思うこと必至である。世界一カッコいい「おじさん」が見れる映画であり、同時に世界中の「おじさん」の背中を「やれんのか!」と叩く。まごうことなき、おじさん映画の傑作だ。

【追伸】
 もちろん真似すると危ないから、そこは要注意ですよ。走るにしても、跳ぶにしても、ストレッチなどを行い、安全と限界を確かめた上で真似をしましょう。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』
全国公開中
出演:トム・クルーズ、サイモン・ペッグ、ヴィング・レイムス、レベッカ・ファーガソン、アレック・ボールドウィン、ミシェル・モナハン、ヘンリー・カヴィル、ヴァネッサ・カービー、ショーン・ハリス、アンジェラ・バセットほか
監督・製作・脚本:クリストファー・マッカリー
製作:J・J・エイブラムス、トム・クルーズ
配給:東和ピクチャーズ
(c)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.
公式サイト:http://missionimpossible.jp/

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